不動産管理会社向けに賃貸仲介業務における反響対応をアウトソーシングできるサービス「ヘヤクレス」を展開するヘヤクレス(東京都渋谷区)が、2024年8月末にリログループの子会社リロクリエイト(東京都新宿区)と資本業務提携を結び、リログループの傘下となっていたことがわかった。今回のグループインにより、不動産管理会社のサポートを強化するなど、新しい動きが活発になるヘヤクレスについて、同社・代表取締役社長の高坂周氏に話を聞いた。

ヘヤクレス・代表取締役社長 高坂周氏 撮影=取材班
資本業務提携によるリログループ入り
ヘヤクレスは、リログループのグループ会社であるリロクリエイト(東京都新宿区)の子会社として、正式に組織編入された。リロクリエイトはコールセンターなど管理会社向けのアウトソーシングサービスを展開している企業で、両社の強みを生かした連携が期待される。
ヘヤクレス・代表取締役の高坂周氏は「話が始まったのは2024年4月~5月頃で、8月末にはまとまりました。すごく早かったです」と振り返る。この決断の背景には、サービス拡大に向けた二つの大きな狙いがあったという。
「大きく2つあって、1つは営業力です。2020年に『ヘヤクレス』を始めて、4年運営する中で、当然競合サービスも出てくる。サービスを広げていくうえで、自分たちでやるより、すでに管理会社や仲介会社と関係値のある会社と組んだほうが早い。1番欲しかったのは営業力です」と高坂氏は語る。
もう一つの理由はサービスの質の向上だ。「元々規模が小さな会社だったので、サービスをもっと作り込む余地がありました。情報管理の視点だったり、クライアントに提供するサービスの質だったり。その点、リログループは上場企業なので、いろんなところでメスを入れていただける。サービスの普及には質も伴っていないといけませんから」と説明する。
ヘヤクレスのサービス内容と進化
「ヘヤクレス」は、賃貸仲介業者に代わって、物件問い合わせへのメール対応やチャット対応を行うアウトソーシングサービス。現在、全国各地の不動産会社が利用している。

ヘヤクレスの「アポ組アシスタント」サービス 画像提供=ヘヤクレス
「チャットスタッフは、賃貸仲介で営業職を最低1年以上経験している方に絞って採用を行っています」(高坂氏)
専門知識を持つスタッフが対応することで高い来店率を維持しているという。
高坂氏は「仲介業界も賃貸仲介も、ある程度効率化をしていく、業務の平準化をしていくことが大切です。仲介業務のなかでも、アウトソーシングできることは外注して、例えば管理物件を増やすことに注力する。オーナーへの提案を増やして管理受託が増えれば、掲載物件や問い合わせを増やすことができる。そのいい循環を作っていかないと」と強調する。
不動産業界の構造変化とヘヤクレスの展望
高坂氏は不動産業界の変化についても言及する。「個人的に思っていることがあって、一言で言うと『先物仲介はもうええでしょう』ということです。みんな薄々気づいていると思うんですよ」と指摘する。
「一部の大都市圏を除き、先物に頼る仲介業者、仲介部門は、なかなか利益が出にくくなってきています同じ不動産でも他の分野に目を向けていく必要があります。賃貸業界であれば、管理をいかにして強化していくかが、生き残るための戦略になると思います」(高坂氏)
今後のヘヤクレスの展望について、「管理会社や管理部門のためになることを突き詰めていく。チャットやメールの品質向上も大事で、システムを交えながら効率化を進めている」と説明。AIなどを活用したシステム化も進めているという。
最終的には「管理会社へのサポートや、管理業務以外を全部巻き取るBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に向かっていきたい」としている。リロクリエイトとの連携を強化し、「管理会社が求めているものをどんどん開発して業務を巻き取っていきたい」と意欲を見せている。
高坂氏は大学卒業後、大手広告代理店を経て不動産テックのITANDI(イタンジ:東京都港区)に入社し、その後独立した。最後に不動産テック企業の成功の秘訣について聞くと「続けることじゃないですか」という答えが返ってきた。「不動産業界は変化を好まない土壌がある中で、新しいことは受け入れられにくい。そこをめげずに続ける。僕も創業当初からずっとメール対応を1人でやっていました。365日、飯食いながらも、電車の中でも。ずっとやる中で業界に受け入れられ、紹介が生まれてきましたから」と語った。
リログループへのジョインによって、アウトソーシングサービスを超えた総合的な管理会社支援へと進化するヘヤクレス。賃貸仲介業界の構造変化を見据えた同社の戦略と、その成長に今後も注目したい。