2024年12月11日~13日の3日間、東京ビックサイトでRX Japan主催の「第9回 JAPAN BUILD TOKYO-建築の先端技術展-」が開催された。
3日間で34,059人が訪れた日本最大級の専門展示会の1つ、「不動産テックEXPO」では最新の不動産テックサービスの出店に加え、様々な催しやイベント、セミナーも開催された。
3日目には、当メディア編集長の服部がセミナーに登壇し3つのテーマで講演を行った。今回はその様子を紹介する。

撮影=取材班
売上200%超成長の不動産会社に聞く。専門家と迫るテック活用の実態
1つ目の講演では、服部をファシリテーターに、不動産営業コンサルタントのレコ(大阪市)取締役の梶本幸治氏と、都心部のワンルームや投資物件などを取り扱うTOCHU(トウチュウ:東京都文京区)代表取締役・伊藤幸弘氏によるパネルディスカッションが行われた。

講演の様子 撮影=取材班
TOCHUは3年で売上200%増、従業員数と直近で大きな成長を遂げている。実際の数字や利用しているテックサービスなどをつまびらかにしつつ、そのポイントを専門的知見や現場視点での意見が交わされた。

TOCHU 代表取締役・伊藤幸弘氏 撮影=取材班
伊藤氏は「2022年から2024年の2年間で売上が13億円から27億円へと倍増した」と具体的な成長データを示しながら、MAツール、CRMツール、電子契約システムなど同社が活用するテクノロジーを紹介。特に月間約350件の査定反響に対して400%の歩留まりを実現し、成約率10%(月間約35件)を達成している点に会場からは注目が集まった。

レコ 取締役の梶本幸治氏 撮影=取材班
梶本氏は全国の不動産会社のコンサルティング経験から「テクノロジー導入の本質は現場の無駄を省くこと。導入自体が目的化すると失敗する」と指摘。特に採用面では「適切な人材を選ぶ基準が重要」と強調した。
会場からはQRコードを通じたリアルタイム質問も活発に寄せられ、集客、営業活動、契約業務、採用など多角的な視点から不動産テック活用の実態と課題について議論が展開された。
『正直不動産』原案者が語る。これからの不動産会社の在り方

講演の様子 撮影=取材班
2つ目の講演では、人気漫画『正直不動産』の原案者・夏原武氏が不動産業界の現状と課題について語った。夏原氏は「業界を良くしたい不動産屋さんと会う機会が増えた」と連載当時から現在までの前向きな変化を感じつつも、囲い込み問題や仲介手数料の上限など制度面での課題を指摘した。
特に夏原氏が強調したのは「内見の有料化」と「仲介手数料上限の撤廃」の必要性だ。「適当に来て適当に物件を見つけてくれるという発想はまだ残っている。サービスは本来有料であるという意識をもっと持たなければならない」と消費者側の意識改革も求めた。

夏原武氏 撮影=取材班
マンション管理においては区分所有法の問題点を挙げ、「中古で買った人には欠陥に対する損害賠償請求権が自動的に譲渡されない」という現状を批判。「現在持っている人に権利がないのはおかしい」と法改正の必要性を訴えた。
不動産テクノロジーについては、「アナログのビジネスをサポートし、無駄を省くためのテックが一番良い」と指摘。「テックに頼りすぎるのも危険。不動産は最終的には人と人のビジネス」と人間関係の重要性を強調した。
締めくくりとして、「宅建士が法律職であることをもっとアピールしてほしい。違法行為をしたら資格停止・剥奪となる懲罰規定をきちんと設け、営業パーソンは全員宅建士であるべき」と提言。「業界全体として品と品格を上げる」ことを求めた。

撮影=取材班
不動産DXの最前線 – 上場企業経営者が語る、テクノロジーがもたらす業界変革
最後の講演では、「不動産DXの最前線」をテーマとして、2024年に株式上場を果たした2社の経営者が登壇した。

講演の様子 撮影=取材班
不動産や工務店に向けたマーケティングオーターメーション「KASIKA(カシカ)」を提供するcocolive(東京都千代田区)代表取締役CEO・山本考伸氏と、月極駐車場オンライン契約サービス「アットパーキングクラウド」を提供するハッチ・ワーク(東京都港区)代表取締役社長・増田知平氏が、サービス創業の経緯や上場前後の変化について語った。

cocolive 代表取締役CEO・山本考伸氏 撮影=取材班
山本氏は元楽天トラベル社長の経歴を持ち、「予約や検索が簡単にできるホテルのように、良い部屋をマッチングする技術を不動産業界に持ち込めないか」と考えたことが創業のきっかけだったと語る。
一方、増田氏は「月極駐車場をホテルのように予約できないか」という自身の体験から事業化を検討。「2010年に思いついたが、実際にオンライン契約を始めたのは2017年から」と時間がかかった理由について、「不動産会社さんにとってメインはアパートマンションで、なかなか業務改善のハードルが高かった」と当日を振り返った。

ハッチ・ワーク 代表取締役社長・増田知平氏 撮影=取材班
上場前後の変化について、山本氏は「社員が上場会社になれるほどお客さんがついてくれて喜んでくれた」と内部の反応に言及。増田氏は「上場準備は社員に相当な負担をかけた」と苦労を明かす一方、「上場して黒字転換したことで、オンライン契約や決済対応の会社として信用を得られた」と顧客からの反応に手応えを感じていた。
営業手法については「見込みの薄いお客様への追客対応を省力化し、見込みの高いお客様に時間を避けることが重要」と説明した。
聴講者の「起業したばかりのスタートアップは、どのようにサービスを拡大していけば良いのか」という質問では。両社とも、「地道な営業活動」の重要性を強調。また、競合サービスが増える中での差別化戦略として、山本氏は「サポート体制の充実」を、増田氏は「業界全体の課題解決への貢献」を挙げた。
不動産業の未来について、山本氏は「労働市場の変化に応じ、テクノロジーを活用して働き方を変えていく必要がある」と指摘。増田氏は「地域地域に根付いた不動産会社の社会的役割が高まっていく」と展望を語った。
次回2025年の開催日程
盛況に終わったJAPAN BUILD、2025年は大阪展(会場:インテックス大阪)が8月27日(水)~29日(金)、東京展(会場:東京ビックサイト)を12月10日(水)~12日(金)を予定している。