不動産仲介業界において、事業用不動産の分野は優先順位が低く、情報の整備も不十分だといわれている。そんな中、滋賀県草津市に本社を置くテナントショップは、事業用不動産専門の仲介サービスを提供し、業界に新風を吹き込んでいる。

テナントショップ・代表取締役・水野清治氏 撮影=リビンマガジンBiz取材班

テナントショップ・代表取締役・水野清治氏 撮影=リビンマガジンBiz取材班

テナントショップは、滋賀県草津市を中心とした事業用不動産の仲介や管理を手がける不動産会社だ。加えて、事業用物件専門のポータルサイト「テナントショップネットワーク」を運営し、2024年6月時点で加盟店数は全国250店舗を超える。

同社代表取締役の水野清治氏は、大手不動産会社での勤務経験を経て、2008年にテナントショップを設立した。大手不動産会社で培った事業用不動産の仲介ノウハウが、草津市のような地方都市にも必要だと感じたという。

「店舗や倉庫、事務所を探されている方はどの街にも一定数いらっしゃる。そういったニーズに応えることができる窓口が必要だと感じた」と水野社長は創業当時を振り返る。どの地域にも仲介会社はあるが、店舗や事業用不動産の仲介ノウハウを持っている会社は少ない。また、事業用不動産の領域はでたらめな情報も多く、正確なデータがないことも課題だった。

そうして事業を始めた同社だが、創業当初は営業にも苦戦し、事業用不動産事業では赤字が続いたという。

そこで、同社の強みとなるホームページと、そこに掲載する滋賀県の物件情報の収集に力を注いだ。インターネット上にある物件情報はごく一部、実際に物件に足を運び、オーナーを説得して、未公開な物件情報も自社ホームページに掲載していった。現在も、ホームページに掲載する物件情報の3分の1以上は所有者から直接集めた情報で、現地を訪問して詳細な情報を入手しているという。

 

テナントショップのサイト

テナントショップのスマホサイト 画像提供=テナントショップ

水野氏は「商品である店舗や事業用不動産のことを十分に理解しておかなければ紹介できない。送られてくるレインズの図面だけでは、真剣に探されているお客様に対して失礼だ」と語る。そうやって集めた物件情報は、「飲食店」や「事務所」など、業種ごとに細かくカテゴリー分けされて掲載される。サイトの使いやすさもユーザーに選ばれるポイントなのだ。

地道な営業を続けていくことで、店舗を探しているユーザーからの反響は次第に増えていった。また、事業用不動産の仲介に特化することで、出店業種別に必要なノウハウや条件などのナレッジが溜まっていくことで、顧客からの信頼獲得などにも繫がっていった。

水野氏は「事業用不動産の仲介を通じて、我々がどのように街づくりに関われるのかを考えている」と語る。街に店舗を出店する人は、その街への出資者であり、店舗を通じて街を活性化させようとしている。そういった動きを促進させる仲介会社の動きは、まさに街づくりだ。

「熱意を持ったお客様から『物件を見つけてください』と言われたら、僕らもそれに応えていこうと思う」(水野氏)。草津市では、同社の仲介により飲食店や美容室、物販店などが集積し、魅力的な街並みが形成されつつあるようだ。

2011年からは、全国的な事業用不動産のポータルサイト「テナントショップネットワーク」の展開を開始した。テナントショップの経営理念「三方よし」のもと、加盟店にはテナントショップのノウハウやツールを提供し、地域の店舗物件のデータベースの構築や、専門知識の習得を支援している。

画像提供=テナントショップ

「加盟店には、ノウハウを培うためのサポートも行っている。実際に当社に一定期間来てもらって、給料をお支払いしつつ学んでいただき自身のエリアで独立してもらう、といったことにも力を入れている」(水野氏)

テナントショップ・代表取締役・水野清治氏 撮影=リビンマガジンBiz取材班

撮影=リビンマガジンBiz取材班

今後の展望として、まずは全都道府県へのネットワーク拡大と、加盟店1,000社を目標に掲げる。そして、全国の事業用不動産のビッグデータを扱うプラットフォームになることが目標だ。

「事業用不動産は、16年やっていてもまだまだ新しい発見がある」と水野氏は語る。

事業用不動産は、都心部のオフィスビルの一部を除けば、市場の実態が見えにくい分野だ。テナントショップは、事業用不動産のプラットフォームになることで、情報の可視化と流通の活性化に全力で取り組んでいる。

同社の挑戦が、事業用不動産と地域経済にどのような影響を与えるのか、今後の動向にも注目していきたい。

 
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