遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

今回は、クラウドによる営業支援システム「cyzen」を提供するレッドフォックス(東京・千代田区)・ 別所宏恭社長に話を聞いた。

 

2019年2月に取材を行った同社、あれから1年半の時が経ち、世の中はコロナによって大きく変わっている。サービスや事業にも変化はあったのだろうか。(リビンマガジンBiz編集部)

レッドフォックス・別所宏恭社長 撮影=リビンマガジンBiz

―前回の取材から1年半ほど経ち、営業というもののあり方が大きく変化しています。レッドフォックス、「cyzen」にも大きな変化があったのではないでしょうか。

コロナ禍によって、売れるモノ、売れる相手、売り方が変わりつつあります。

つまり、「cyzen」を活用した営業活動によってライバルと一気に差を付けることができる大きなチャンスだと考えています。

―具体的にはどういったことでしょうか。

「cyzen」はフィールドワーカーの業務を効率化させ、加速するためのサービスです。

我々は、営業社員は失注しても良いからどんどん訪問に行くことを、クライアントに提唱しています。そこで顧客のニーズを聞く。そのニーズの報告が「cyzen」にたくさん集まることで、新しいサービスや商品ができるきっかけになるのです。

新たなニーズを聞き、いかに提案のきっかけをたくさん掴み、必要とされるサービスや商品を開発できるかが重要です。

営業社員は、自らが聞いてきた顧客の細かいニーズを社内に共有することはありません。なぜなら、商品が売れる・売れないかが大切であり、その結論に辿り着くまでの顧客ニーズには、関心が高くないからです。しかし、「cyzen」使うことで、簡単にニーズを共有することができる。

コロナの影響が大きいとされていた6月に、創立以来最高売上を出したハウスメーカーがありました。これは、営業社員が変わらず営業活動を続け、組織的にニーズを聞き出していたからです。「今は家を買わない」と断られていたけれど、リモート・在宅ワークになって、改めて住まいを見直す人が多くなったときに、家が欲しくなるといったニーズが分かっていたからではないでしょうか。

コロナ禍であっても営業には早さと数が重要なのです。

―「cyzen」のユーザーは、変わらず営業活動を行っていたのでしょうか。

フィールドワークの動きに関しては、不動産事業者の「cyzen」ユーザーデータを分析すると、4月は外での営業活動はストップしていましたが、ここ最近はコロナ前の水準に戻ってきています。業種によるでしょうが、特に不動産業の営業は、外を回って情報を集める「足で稼ぐ」ことが主軸なので、こういう状況なのでしょう。

―もうすでに現場の動きは戻っているんですね。「cyzen」への新規顧客の反応はどうでしょうか?

当社でアプローチするのは、企業の経営者や自治体のトップです。DMを送り、先方からのお問い合わせに対応しています。我々は彼らに対して、”爆速”をキーワードにプロモーションをしているんです。とにかく最速で売上を上げ、利益を確保するということですね。

「cyzen」は、アプリの機能というよりも、この”爆速”に価値を感じて申し込みくださっているケースが多い。特に、不動産事業では、細かい情報をいかに早く集められるかがカギですから。

コロナの影響で、全体的にゆったり働こうという雰囲気になっていて、現場社員の業務スピードが落ちているんですよね。スピードが落ちれば、当然売上も落ちます。経営者の方はここにものすごい危機感を感じているのでしょう。


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