遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。
今回は、スペースシェアプラットフォーム『スペースマーケット』を運営するスペースマーケット(東京・新宿区)の重松大輔社長に話を聞いた。重松社長は2019年1月以来、2度目のインタビューとなる。(リビンマガジンBiz編集部)
スペースマーケット(東京・新宿区)重松大輔社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部
―前期6期目(2019年12月期)で事業が初めて黒字化し、2019年12月には東証マザーズに上場しました。前回の取材から1年ほど経ちました。スペースシェアのマーケット全体が成長しています。
まず、ユーザーのスペースシェアに対する理解が進んできています。
「スペースマーケット」の利用目的として一番多いのは、小規模の会議や打ち合わせです。ただし、金額・単価の割合では特定少数でのパーティー利用、仲間で集まるようなシーンが多いですね。
誰かが「スペースマーケット」を予約し、そこでの参加者が「次は自分も使ってみようかな」というリピートユーザーがとても増えています。
掲載スペースは2019年12月時点で12,200件にまで増えています。
―スペースシェアサービスを見ると、上手くいっている会社とそうではない会社があるようです。
当社は丁寧に事業を成長させることを意識しています。
シェアリングエコノミーは、「鶏が先か、卵が先か」の世界です。
良いホスト・スペースを増やしていくことと、借り手を集めて、様々な使い方をイメージしてもらうこと。この2つを丁寧に育てていかなければなりません。スペースを増やすことだけを意識して、使い方の分からないスペースを増やしたところで借り手はつきません。
―サービス開始当初は、話題作りのために少し変わったスペースを借りられるようにしていましたね。
ある程度、事業がスケールしていくなかで、スペースの質を重要視し始めました。
突飛なスペースレンタルを打ち出していたのは、打ち上げ花火のようなもので、話題性はありますが一過性です。また、開始当初は、どのスペースがどれぐらい稼働するかも分からなかった。何でも良いので登録してみようという姿勢でしたね。
ただ、実際に利用が増えて、データを分析できるようになったことで稼働するスペースの傾向が見えてきました。
―どういった傾向があったのでしょうか。
例えば、10人前後が入れる広さで、築古だけれども内装がリノベーションされている物件があったとします。大型テレビや使いやすそうなキッチンもある、といった条件も使い勝手が良い物件ですね。
このような物件は、昼間は会議に使われ、夜はパーティーなどで需要がある。こうした、朝昼晩と利用があるスペースが最も稼働するということが分かりました。
何かに特化したスペースよりも、いろいろなユーザーに好かれる、懐の深い物件が最も収益を生みます。
―スペースの質を保つことを重視しているそうですが、掲載物件には何か基準があるのでしょうか。
信頼性を担保するためにも、審査はさせていただいておりますが、掲載において具体的なスペックの条件基準はありません。
ただし、「良いスペースが生き残る」というのはあります。利用したユーザーがそのスペースを評価して、レビューが多く、高評価の場合は、そのスペースが上位に表示される仕組みになっています。
新しくスペース活用を始めるホストの方も、評価を参考にしながら、自身のスペースを作っています。
また、掲載している物件の4割ほどは、レンタルスペースの運用代行会社がプロデュースした物件です。彼らが文化を牽引してくれています。