遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
今回は、「OYO LIFE」を運営するOYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN(東京・千代田区)の勝瀬博則CEOに話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)
※このインタビューは2019年9月5日に行いました。
―業界では、「OYO LIFE」の動向が話題に上ることも多い。その原因は何だと思っていますか。
「OYO LIFE」が本当に何をしようとしているのか、その本質を我々がきちんとお伝えできていないからだと考えています。本質を理解していただいていないというのは、我々が不動産業界とまだまだきちんとコミュニケーションできていないということでしょう。
管理会社にとっては、「OYO LIFE」がオーナーと直契約をしたら、「OYO LIFE」が管理を取ってしまうのではないかと不安に感じられているかもしれません。しかし、「OYO LIFE」は共有部分の管理を行いません。我々は法人の借主なんです。
―「OYO LIFE」の本質とはどういったものでしょうか。
我々のサービスが賃貸に特化しながらも、「OYO ROOM」「OYO HOUSE」「OYO HOME」という名前ではなく「OYO LIFE」なのか、という部分です。
住宅は、生活(LIFE)の一部です。つまり、部屋の先にサービスの本質があります。
今までの不動産会社は、需要が高ければサービスや特典を付けなくても良かった。1番儲かる方法は、1番利益の上がることの回転率を高めることでした。だから、入居者へ物件以上の価値を提供することはせず、とにかく入居者の回転を上げていました。なぜなら入居者がいくらでもいたからです。
ところが、借りる人が少なくなってくるこれからは、入居者へサービスを提供する必要があります。ホテルも同じです。ホテルにはレストランやスパがついていて、部屋の冷蔵庫にもドリンクが入っています。それは、稼働率を上げるだけではなくて、お客様へ様々なサービスを提供し満足度を高めているから。泊まっている人の満足度・利益を上げようとしなければ経営がままならない。「OYO LIFE」がいかにしてサービスを提供するのか、これは後ほど紹介します。
また、不動産は入居したときに、部屋にカーテンすら付いていない。本来ならばカーテンを備え付けても良いはずです。欧米では、ウインドウトリートメントと呼ばれ、カーテンが備え付けの部屋があります。冷蔵庫や洗濯機が付いている部屋も多い。
「OYO LIFE」は、家具家電が揃っている部屋を豊富に提供しており、事前に引っ越しの為に何一つ買う必要がない便利さ。敷金礼金などもないので貯金がなくてもすぐに引っ越しすることができます。
―これまでの不動産業のように、部屋だけにこだわるのではなく、その後の生活までをビジネスの射程にしているのですね。
「OYO LIFE」は、これから様々な住にまつわるサービスを提供していきます。それにあたって、2つの「3分の1」という大きなアドバンテージを持っています。
1つ目は、賃料は収入の3分の1を占めているといわれていることです。これは、サブスクリプションサービスとしては最大です。しかも毎月必ず支払われる。
年収600万円の人は年間で200万円を家賃や家賃関連に支払われている。これを毎月クレジットカードで支払っていると、1番大きなクレジットカードの支払いになります。非常に重いクレジットカードのペイメント情報を持っている。これは大きい。
2つ目は、入居者の時間の3分の1を押さえているということです。
ほとんどの人は1日8時間以上を家で過ごします。過ごすといっても、実際はほとんど寝ているだけかもしれません。しかし、その8時間のうち20時~23時はEコマースのゴールデンタイムと言われています。業務時間や同僚との食事中に買い物をする人ほぼはいません。帰宅して部屋の中で購入しているのです。
なぜAmazonがスマートスピーカーを提供しているのか。それは、売買が家の中で行われているからです。普通の不動産会社は、貸している家の中で消費行動が起きていたとしても稼ぐことができません。これってもったいない。コンビニよりも便利な購買サービスとしてEコマースが出てきました。今では、家の中が究極のショッピングプレイスなのです。
これとペイメント情報をくっつければどうでしょうか。
例えば、「OYO LIFE」のスマートスピーカーで注文したサービスは賃料とあわせて支払って「OYOLIFE」のポイントが付くという形ならば、便利ではないでしょうか。これもホテルと似ている部分ですね。ホテルは、食事やサービス利用の料金をチェックアウト時に支払います。なぜ家でもそれができないのでしょうか。家の中で買ったものは、全部後払いで決済することができれば便利でしょう。
さらに、様々なサブスクリプションサービスもすべて「OYO LIFE」に入れてしまおうと構想しています。「OYO LIFE」は、入居後の生活にどれだけメリットを提供できるかに商機があると思っています。