―導入した企業にはどういった効果が出ていますか。
まず省人化です。
コワーキングやシェアスペースをはじめ、最近では自習室での利用も増えています。
24時間のサービスを提供しているところは、管理人を常駐させるわけにはいきません。
そこで、会員証で「Akerun」を解錠できるようにして、無人化させることで人件費を大幅に削減することができます。従業員が1人減るだけで、月30万円。24時間可能なのでその3倍ぐらいは削減できると思います。
―利用者や出入りが多い空間でのコスト削減になる。
そうですね。
また、夜間に利用できるようになることで、コスト削減だけではなく収益化にも貢献しているケースも多いですね。
特にスポーツジムに多いのですが、日中はパーソナルトレーニングなどで、スタッフがいることが多い。ただ、最近では仕事が終わった後、夜間に運動する人が増えており、夜も開けないともったいないと考える事業者が多い。
そこで、スタッフがいない時間も収益化するために、「Akerun」を導入し、売上が上がるという事例もあります。
スポーツジムだけで、毎月10~20社からお問い合わせいただいています。
―不動産会社の利用はどうでしょうか。
自社管理物件への導入もありますが、ほとんどがテナント発信の導入ですね。
もちろん、デベロッパーに購入いただき、ビル一棟に導入いただくこともありますが、全体の9割はテナント側に導入いただいています。
―最初からテナント側の利用を考えての商品だったのですか。
起業したときは全く考えていませんでした。
フォトシンスは2014年に創ったのですが、最初は家庭向けのスマートロックを開発するつもりでした。
当時はスマートロックというものがこの世になく、スマートロックという言葉もありませんでした。だから、「鍵ロボット Akerun」と称していました。
当時は、「スマートフォンでカギが開いたら便利だろう」と考え、売りきりで提供していました。コワーキングスペースや、オフィス、家庭向けなど様々なシーンで導入いただきました。
そういったなかで、導入してすぐに利用いただくのですが、次第にアクティブ率が下がっていくんです。つまり使わなくなってくる。それを調べると、ほとんどが家庭向けに導入いただいたケースでした。
「家庭向けではあまり価値貢献できていない」ということが2015年の夏にはっきりしました。
スマートロックは目新しいですが、いざ買ってみると頻繁に利用することがない。スマートロックの特徴は、カギをシェアして履歴を確認することだと考えています。家庭向けではあまり価値を出すことができないと感じました。
家事代行や民泊運営などもありますが、日本全体のマーケットからすればごく一部のユーザーです。社会に与えるインパクトはほとんどないと感じていました。
一方でアクティブ率が高く、日々活用いただいていたのが法人やコワーキングスペース、シェアオフィスの分野でした。そこに特化した商品を作ろうということで、「Akerun入退室管理システム」を作りました。
フォトシンス・河瀬航大社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部
―2015年頃から方向転換したと。
ハードウェア自体を作り替えました。
そのため、利用いただいていた法人にもヒアリングを行いました。
すると「プライバシーマークをとりたいけれど、入退室管理システムが100万円ほどかかってしまう」といった課題や、大手企業との取引におけるプレッシャー、個人情報の取り扱うためのハードルなどを聞き、適切にマーケットにフィットする商品を1年かけて作りました。
スマートロックの機能1つ1つがどこのマーケットとフィットするかを100項目以上洗い出し、一番結びつきが強くて課題解決できると考えたのがオフィスの執務室でした。