タンブルバー・茅野智路社長 撮影=リビンマガジンBiz
―ワーカーはどれくらいの登録があるのでしょうか。
ワーカーにはAppleストアやAndroidストアから無料でダウンロードできるアプリを使っていただくのですが、既に13万ダウンロード以上あります。また、外部企業と連携しており、そこが抱えるリソースもあわせると1,000万人以上のワーカーがいます。
また、今アプリを開いているワーカーのリアルタイムデータを保有しています。そのため案件の周辺にいるワーカーに仕事の依頼をすることも可能です。
ワーカーの位置情報をトラッキングすることで、指定の地域内に1ヶ月間でどれほどのワーカーがいたのか、といった期間と地域で絞りこみができます。対応できる可能性が高いワーカーだけに仕事の依頼をすることもできます。
―どのような企業の利用が多いのでしょうか。
不動産関連の企業が多いのですが、最近では金融機関からの依頼も増えています。
「融資先の物件確認」や「融資先候補」を探してきて欲しい、といった依頼です。
―「融資先候補」の調査とはどんなものでしょうか。
例えば、企業がオフィスの移転や引っ越しをすると、キャッシュフローが悪くなります。思った以上にお金がかかることもあり、お金が足りなくなるケースがあります。そのタイミングで、銀行が融資の話をすると実は成約率が高いと言われています。
そこで、金融機関からは引っ越しする会社や、玄関に蘭の花が飾ってある会社を見つけてきて欲しいという依頼があるんですね。
―まさに現地に行かなければわからない情報ですね。
そのほかにも、飲食店への覆面調査や、自治体の依頼で街の混雑情報を観光客に伝えるなど様々な案件に対応しています。
また、海外案件も多いです。
例えば、シンガポールのビールメーカーがインドに進出するために、インドの酒屋とバーに売っている商品と価格を調べて欲しいといったものや、ある世界的な文具メーカーが自社の商品がいくらで売られているのかを、イランのテヘランで調べて欲しいといった依頼もありました。
―不特定多数のワーカーが動くという点で情報の精度に不安はないのでしょうか。
例えば、更地を探すという仕事で、更地の写真が投稿されたとき、裏ではGPSの位置情報などとデータを紐付けることで場所を特定し、情報の精度を確かめています。
そのほかにも、同じ対象を複数のワーカーが投稿するような場合でも、重複しないようにアラートが出るなどの機能も付いています。
また、地図上で簡易的な面積計算も可能で、航空写真と比べて正しいかどうかの確認も行っています。測量や登記を取っているわけではありませんが、おおよそ10%前後の誤差で面積を計算することができます。
データをご提供する企業には、用途地域や広さを加えて納品しています。
―利用企業はどれくらいでしょうか。
まだまだ不動産会社は10社程度で、全体でも30社ほどです。
手広くクライアントを増やすというより、1社1社の要望に対応ができるようニーズに応えクオリティを向上させている段階です。
―2019年2月には不動産業界に特化した「Pod Land」(ポッドランド)を提供開始しました。
「Pod Land」は、3ヶ月以内の更地や老朽化アパートや空き家を土地面積や用途地域、前面道路を指定して検索することができるサービスです。
画像=プレスリリースより
現在でも、営業社員が地域を歩いて土地を探している会社は多いです。しかし、これだけ働き方改革が叫ばれている昨今、歩いて更地を探すというのはとても非効率ですよね。それならば、現地の人にやってもらえれば良い。
そこで、ワーカーによって常に新しい情報を集めて、「Pod Land」に掲載する仕組みを作りました。不動産会社は対象の物件の丁目や概要情報を無料で見ることができます。そして、自社の欲しい物件の情報があれば、詳細情報を月額払いで取得することができます。
―現在どれほどの物件数データが掲載されているのでしょうか。
「Pod Land」には、基本的に3カ月以内の情報を掲載しています。
例えば、現在(2019年4月時点)、3ヶ月以内に発見された東京都内の更地データは約1,500件あります。
土地情報のニーズは、デベロッパーやパーキング、倉庫会社、駐車場シェアリングサービス企業などからの引き合いも多く、柔軟に対応しています。
―駐車場シェアリングサービスからはどういった依頼があるのでしょうか。
特定の地域にある月極駐車場の空車情報と、管理会社の連絡先を集めて欲しいという依頼です。営業リストとして活用されたいようです。
実は、月極駐車場のデータベースというのは日本にはほとんどありません。
当社では、東京・大阪・名古屋・福岡の56,000件の月極駐車場のデータを集めました。住所や管理会社や登記情報も紐付けてデータにしています。また、停められる台数も集計しています。
―案件依頼からデータの納品まではどれくらいの時間がかかるのでしょうか。
企業の使い方にもよりますが、例えば関東であれば約2週間で対応可能です。早ければ1日、2日で終わることもあります。
―空き家を探す、という点では各自治体も職員の目視で空きや確認を行っています。そこがタンブルバーに置き換わる可能性もありますね。
空き家を探す際、我々は外観写真の掲載だけではなく、郵便受けやカーテンの有無、物干しがあるのかなども項目に設定して調査しています。
―利用企業はどのような成果がありますか。
ある利用企業からは、人件費が7割ほど削減できたという話をいただいています。
これまでは地域ごとに営業所を作って、いわゆる足で稼ぐ営業がメインだったものが、当社のワーカーが情報を集め、クロージング部隊として社員を投入するといったスキームに変わりました。
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