ライナフ・滝沢潔社長=撮影・リビンマガジンBiz

―どういった利用シーンが多いのでしょうか。

スマートな内覧を目的とした導入もありますが、オフィスでの活用もありますね。アルバイトの方に鍵を渡さなくても、アプリで鍵を配れば良いということに利便性を感じてもらっています。

―サービスを使うことで、どれくらいの効果があるのでしょうか。

内覧を自動化したことで、内件数が1.2倍になった事例があります。「スマート物確」の自動応答でも、電話の人が受ける件数が50%は減りました。

―スマートロックという分野でも様々な企業が出てきました。ライナフの強みはどこでしょうか。

よく名前の聞く会社は、ほぼ同時期に発売開始しています。

ただし、発売後の発展性やカバーしていく分野が異なってきているのかなと感じています。ある会社は、オフィスに特化してセキュリティ製品としての機能を重視しています。これは、セコムやアルソックといったセキュリティ・警備会社と競合していく方向です。

別の会社は、家電量販店に並べて売るといった形になっていますね。ガジェットや家電として広めていこうとしています。

一方で、我々はもともとが不動産に携わっていた人間なので、どこまでいっても不動産の価値を向上したいというところで、製品やサービスを作っています。

つまり、不動産分野に即したものづくりが、当社の強みになります。不動産業界をきちんと理解して不動産業界に向けて売っていくのは、実はかなり骨が折れることですよね。

―具体的にどういった部分ですか。

例えば、業界知識を知らない人がスマートロックを作った場合、管理会社・オーナー・仲介会社という関係性を理解するのも大変です。鍵の権限はオーナーが持つのか管理会社が持つのかだけでも大きな違いがあります。

管理会社にアプリを提供しても、「スマホのアプリで管理できるような管理戸数ではない」とか「管理会社用の管理画面作ってくれ」という話になります。これは家電の発想では考えられない要望だと思いますよ。

ある意味でわがままで、なかなか受け入れてくれない。でも、それは24時間、入居者の生活を託されているからでもある。だから、「こういう機能がなきゃ」「こうじゃなきゃ使えない」という話がどんどん出てきます。

つまり業界に特化するサービスを作ることに高いハードルがあるんです。

―業界に配慮したサービスつくりという部分で、「Ninja Lock」はどういうところに配慮していますか?

管理画面の作り込みです。

一斉に鍵を送ることができたり、管理権限をしっかり分けることができたり、ということをITの知識がない人でも使えるようにする点に重きを置いています。

―滝沢社長は起業する前、会社員だった20代のころから不動産投資を始められたとうかがいました。そして起業後も不動産に関連した事業を展開しています。不動産にこだわる理由、不動産の魅力はどこにあるのでしょうか。

私が不動産投資をはじめたきっかけは、将来独立するための資本金作りでした。

しかし、実際に銀行から億単位で借り入れして不動産を持つと、「将来のために」とか言っていられなくて、空室があるとすごく焦るんです(笑)。「なんとか埋めなきゃ」というような気持になるんですよね。

自分が借金までして買った物件なので、愛着も湧くようになります。不動産愛みたいなものがより強くなっていきました。

私にとっては、そもそも不動産も不動産業界も好きなところです。不動産業界を理解していて、不動産が好きだからスマートロックを作ったというところは他の企業と違うところだと思います。

スマート物確の管理画面 画像提供・ライナフ

―今も不動産を所有していますか?

だいぶ売ったので、残り1棟です。

起業からしばらくは、出資を受けなかったので、不動産を売ったお金を開発資金にして、足りなくなるとまた不動産を売って、そのお金を全部使って・・・みたいな感じでした。3,000万円くらい突っ込んでいます。

―「Nninja Llock」に連動した「スマート物確」や「スマート内覧」といったサービスの活用状況はどうなのでしょうか。

すごく使われるようになってきました。

以前よりも、自動化することへの抵抗がなくなってきてるなと感じます。

当初、自動化しましょうという提案に対して、「いや、やっぱり人と人なんだよ」という考えを持たれていた方が多かったのです。でも、今は働き方など変更を求められるようになると、「自動化しても良いね」というように徐々に変わってきています。

▶次のページ:不動産業界にデータサイエンティストが生まれる?(3ページ目)

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