遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。
これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
今回は清掃や物件の撮影などの業務を発注したい管理会社と空き時間を使って効率よく働きたい個人を結ぶ「PMアシスト」を運営するアクシスモーション(東京都新宿区)が登場する。賃貸管理の現状に危機感を覚えるという田中祥司社長に聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)
―サービスについて教えてください。
我々が提供している「PMアシスト」は、ヒューマンリソースのシェアリングプラットフォームです。簡単に言えば、空き時間を使って働きたい人に「インターネット上でお仕事の依頼ができる」サービスです。
シェアリングビジネスの1つなのですが、企業側からは雇用なし、研修なしでお仕事を依頼することができる点。働く方からすると、好きな時に好きなだけ働くことができる点でメリットを感じていただいています。
2018年には不動産業界に限らないサービスとして「spotgig(スポットギグ)」の提供も開始しました。
―不動産業界に特化した「PMアシスト」からスタートしたのですね。
「PMアシスト」は2014年から提供しています。
一口に不動産といっても、幅広い仕事がありますよね。その中に賃貸不動産の管理があって、さらにその中に細々とした業務がある。
例えば、物件の清掃はとても大切ですが、喜んでやっている人ばかりではない。だから、アウトソースしたいという要望は多いと思いました。
問題は、そんな都合の良いタイミングで単発の掃除の仕事をやってくれる人がいるのかでした。でも、いざ始めてみると、大勢の方が登録して、熱心に働いてくれました。「家事の合間に物件に行って掃除するだけで、アルバイトより高い時給がもらえる」というコンセプトが伝わり、参加してくださる方がたくさんいらっしゃいました。
―不動産会社の反応はどうでしょうか。
「どうやったらこんなに人が集まってくるの?」「主婦の方が専門業者に負けないくらい一生懸命掃除してくれて、びっくりしました」など、不動産会社からもとても喜ばれました。
自分の住む地域でライフスタイルに合わせた働き方を望んでいる人というのは、たくさんいるんですね。
―現在、どれぐらいのタレントが登録しているのでしょうか。
1万6千名以上です。(2019年4月現在)。
毎月3万円以上稼いでいるタレントだけでも600名以上います。
タレントの男女比はほぼ50対50です。
年齢は30代の方が多いですね。
管理や完了報告などをスマートフォンで行っているのですが、スマートフォンのユーザーという意味で、若い方が多いのでしょう。
―全国に対応しているのでしょうか。
全国です。
地域によってタレントの偏りはありますが、北は北海道、南は沖縄まで提供しています。
―具体的にどういった作業が多いのでしょうか。
「PMアシスト」に限れば、清掃、点検、物件の写真撮影がボリュームとしては大きいですね。
点検は不動産管理会社の代わりに物件を見に行き、修繕が必要な箇所をレポーティングするという作業です。
―何社が導入しているのですか。
アパート系の管理会社を中心に200社を超えました。
ハウスメーカーからの引き合いも多いです。
試算すると、アルバイトや派遣を雇うより、コストカットになっていて、年間約2億円のコスト削減ができたと仰っている企業もあります。
―普通のバイト代よりも高いという話がありました。実際にはどれくらい高いのでしょうか。
実作業時間での時給が30%ほど高いです。
全国平均の時給が1,000円を少し上回るぐらいで推移していますが、我々は平均約1,400円です。
管理会社は、広域な商圏に対して複数の管理物件を持っています。
単純な作業を行うだけでも、スタッフの移動時間や交通費が出てしまいます。
「PMアシスト」は、その物件の近くに住んでいる方に仕事を任せます。
わざわざ片道30分かけて行くことと比較すれば、時間給で考えれば安いでしょう。
平均時給と比較して30%高いですが、不動産会社からすると、スタッフを雇用するより約20%のコストカットにつながっています。
きちんとした仕事のマッチングができ、経済合理性を双方に対して提供できるWin-Winなビジネスモデルだと考えています。