北崎朋希氏(撮影=リビンマガジンBiz)
ーコンパスとeXpの話が出ました。本サイトの読者は住宅の売買仲介に携わる企業が多いのですが、アメリカの不動産仲介について最新の動きについて教えてください。
本間 アメリカの不動産仲介エージェントの多くは、個人契約です。会社(ブローカー)に所属しているというより、企業ブランドを利用しているだけです。つまり人材流動性が非常に高い。「会社を移籍しました」といった連絡もよくあります。また、チームごと移籍することもあります。そこは仁義なき戦いですね。会社ではなく、人にフォーカスがあたっている点は大きく違います。
ーそれが顧客から信頼を得るための動機になっている部分はありますよね。サービスを追求することがエージェント自身に返ってくる。
本間 コンパスやeXpがテックなのかという議論にも関連してきますが、不動産ビジネスには、これからも人が必要です。人をまとめるために、テックをうまく使っているというのが、こういった企業の本質かもしれません。住宅の流通に関わる業務全てをデジタルに置き換えられるという期待があるとしたら、それは幻想なのかもしれません。
北崎 アメリカでも、昔は立派なオフィスに大きな看板がないとお客さんは来なかった。しかし、今はSNSが普及したことで、エージェント個人が自らプロモーションをすることが可能となり、会社の役割が低下した。そうなるとエージェントからは「どうして所属する会社に仲介手数料の一部をこれまでと同様に上納する必要があるのか」という不満が生まれた。そうした潮流をうまく捉えたのが、eXpですね。
最低限、必要なものだけを、安く提供して欲しい。その他は、エージェントが自分でやるから上納金をディスカウントしてねというビジネスモデルが生まれた。でもエージェントが住宅売買の中心に関わることは同じです。
本間 住宅を決めることは、人生の大きな選択です。売買はもちろんですが、賃貸であってもネットだけで完結できる人はそうはいないんですよね。もう1つは、ネットに情報を上げる人が少ない。日本でもIDU(※3)がありましたが、上手くいきませんでした。家を売るというのは人が交渉しないと上手くいかないのではないでしょうか。私が古い考えなのかもしれませんが。
※注3=IDU(後にジアース、現在は日本アセットマーケティング)…かつてネット上で売り手と買い手をオークション形式でマッチングするサイト「マザーズオークション」を運営。透明性と革新性は高く評価されたが、参加者が集まらず閉鎖。時代を先取りしすぎたと評価されることが多い。
北崎 私も、例えばAmazonに住宅が掲載されるようになっても、買う人は少ないように思います。現地に見に行って、商品をよくよく説明してくれないとわからないですから。
本間 誰もが、特に不満なく3%の手数料を払っていますよね。アメリカでもそこ自体は変わらなくても、物件情報のシステムだとか、集客方法などは劇的に変わっています。だから、大きく変わっていく部分と、実は変わらない部分と2つの話がありますよね。
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