遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。
これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
無限の可能性にかけ、旧来の市場を打破しようと奮闘するベンチャー企業経営者の言葉には、挑戦するものを応援する熱がある。
本誌が行った過去のインタビュー記事から、あなたの心に火をつける、「熱言」を紹介する。(リビンマガジンBiz編集部)
データがないんだったら集めるしかない。
リーウェイズ・巻口成憲社長
投資不動産は入居者が住んでいる状態で売買されることも多い。そのため、投資家は実際の部屋の中を見ずに売買されることがある。数字上のパフォーマンスが重視されていて、投資対象は日本にとどまらない。ネットツールの発展で、ボーダレスにマーケットは世界に拡がり続けており、その規模は2京円と言われている。
この巨大な市場に目をつけた巻口は「グローバルな不動産投資市場を作りたい」と思い、投資家や投資市場向けの不動産テックサービスの開発を志した。
「投資不動産の最大の課題は、将来予測ができないということです。投資不動産の判断基準は、現状表面利回りしかない。しかし、表面利回りは今この瞬間の利回りでしかない」、そのため将来はいくらの家賃が期待できるのか、数年後に売却すればいくらくらいで売却できるのかが分からない。そのため新たな投資が少なく、日本の不動産投資市場が大きくならない。
情報を可視化して、多くの投資を呼び込むためのサービスを作りたい。そう思ったが、しかし、不動産市場全体の課題が巻口の前に立ち塞がった。
データ不足である。
不動産市場全体の問題で、情報がオープンにされず、個々の取引のほとんどは記録されていない。そのため予測の実証が困難で、精度を上げることが難しかった。
しかし、巻口は諦めなかった。
データがないんだったら集めるしかない。
10年間にわたってインターネット上にあるバラバラの不動産取引に関わるデータを収集した。その数は今や6,000万件に達し、さらに増え続けている。
集めたデータを人工知能を使って分析し、家賃の下落率や空室率、売却時の価格などを推定できる『Gate.』を開発した。サービスを作るのに費やした費用は3億円にも上る。
今、スルガ銀行の乱脈融資事件が発覚したこともあり、『Gate.』は不動産投資の将来予測ができる指標として金融機関からの相談が急増している。
サービスは不動産投資市場へ変化を起こしつつある。
不動産ビジネスの現場で浮かんでは消えていく、情報を愚直に集め続けたことが礎となっている。
「今までゴミだと思っていたものを宝物に変えた」と巻口は語る。
「データがない」で諦めなかったから、見えてきた未来がある。
(敬称略)
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