SB C&S・IMAoS開発責任者 小野誠人氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―不動産業界の理解は進んでいるのでしょうか。
不動産会社に訪問すると、1年前とは話す内容が変わってきています。
明らかに「電子化、自動化の波に置いて行かれてはだめだ」という危機感を持っている会社が増えてきました。それにあわせて、不動産会社からの要望なども増えています。
「ショートメールを見なかったらどうするのか」「相手がガラケーだったらどうするのか」「更新契約の際に連帯保証人が変わったらどうするのか」といったネックをぶつけていただいています。そういった要望から「電子契約は賃貸に合わない」と考えてしまう方も多い。しかし、私は諦めません。
例えば、電話での自動音声案内によって、契約更新の意思確認や電子契約の事前案内ができるシステムを用意しました。その際に入居者の変更情報や、スマホユーザーなのか等を確認し、極力負担がかからずに更新契約でIMAoSを利用できる仕様にしました。
この音声案内によってガラケーユーザー以外の入居者の対応を電子化する。例えば月に100件の更新があれば、「その中の半分を自動化しましょう」と伝えています。
不動産会社からいただいた要望は、必ずクリアしていきます。不動産賃貸契約に特化しているとうたっているので意地です(笑)。
また、一度電子化した契約は、基本的には紙に戻ることはありません。自分の言葉を信じて徐々に広げていきたいと思っています。
―少しずつ理解されているのですね。
まだまだ、紙で契約した方がこれまで通りで楽という方も多いです。通販サイトのAmazonが出たときに、「本屋に買いに行った方が早い」と言っていた頃と同じような感覚ではないかと思います。
サービスに対して、ライバルを意識するのではなく、まず自分たちのお客様が完結できるサービスにしなければならない。横を見ても仕方がないと考えています。コスト削減や、業務効率に成果は出ていますが、まだまだ『IMAoS』はスマートではありません。保険の契約書や保証会社の申込書、口座振替用紙など、もっともっと煩雑さをなくす部分があると思っています。
―自社サービスのブラッシュアップが重要なのですね。
専門性のある仕組みを追求していけば、結果的に他社サービスとの差別化に繋がっていくと思っています。他社サービスよりも安くするのではなく、きちんと使ってもらえる仕組み作りからやらなければいけないと思っています。
―『IMAoS』のきっかけは何だったのでしょうか。
6年ほど前、当社が独占販売権を持っていた電子契約サービスを販売する部門を立ち上げました。
しかし、これが全然売れなかった。300社に提案してせいぜい5件受注できるか、といった感覚です。300社にはほぼ個別の提案書を作成していました。
この経験から、個別提案ではなくて業種や業務に最適化されたパッケージ化しなければならないという話になり、不動産の中でも賃貸契約にフォーカスしたサービスにする方向性を見出しました。
―賃貸に商機を感じたのですね。
そうですね。
不動産業界内では「紙じゃなければ契約できない」と考えられていたのですが、宅地建物取引業法の条文を見ると「そうとは書いてない」と気がつきました。
しかも賃貸住宅の契約は多い。ある大手不動産会社では社宅の契約だけで2万件あるというんです。初めて聞いたときは間違いだと感じました(笑)。
だって、他の業界では、多くても月に200件ぐらいの利用でしたからね。それを聞き2015年から業界の研究を始めて、2017年に『IMAoS』をリリースしました。
―これからの展望などはあるのでしょうか。
ソフトバンクの社風にも通じるのですが、我々はメーカーではありません。逆にメーカーではないから、良いものをどんどん取り入れて、良いもの同士を繋いでいくことができると思っています。様々なプレイヤーと、いろいろな問題を深掘りして、新しいモデルを作っていきたいと思っています。
この3年で「不動産賃貸契約は電子化できない」「不動産売買契約は電子化できない」をひっくり返しました。あとは不動産業界に「本当に良い」と思っていただければ、事業は動いていくと思っています。
3年で1万社の利用を目標にしています。今は、無謀な数字と笑われるかもしれません。しかし、ニーズとポテンシャルは十分あります。今は不動産管理業の方を中心に導入いただいておりますが、仲介業にもご利用いただけるサービスも準備しています。そうなれば理論的には10万事業者がお客様になります。
1万社は、決して不可能ではありません。