遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。
これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。
今回は、不動産業界に特化した電子契約サービス『IMAoS(イマオス)』を提供するSB C&S(旧ソフトバンクコマース&サービス:東京・港区)IMAoS開発責任者 小野誠人氏に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)
SB C&S・IMAoS開発責任者 小野誠人氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―提供されているサービス『IMAoS(イマオス)』について教えてください。
『IMAoS』は、従来は紙の書類だった賃貸契約をスマホなどで行えるサービスです。
仲介会社や管理会社が契約書のファイルをクラウドに上げると、借主や連帯保証人、貸主の方がスマートデバイスや業務端末で確認し、契約について同意や承諾をする場合、そこで同意をした証拠を残せるようになります。
写真と文字をアップして、それをスマホやパソコンで見た人が「いいね」をする。やっていることはFacebookと同じだと言っています。
(画像提供=SB C&S)
不動産会社は紙の契約書文化がありますので、「借主が判を押してから貸主が判を押す」という発想を持っている人がいます。しかし、『IMAoS』はサーバーの中にデータがあるので、順序が逆でも同時でも自由に運用することができます。
紙の常識がなくなるサービスですね。
―どのように運用しているのでしょうか。
不動産事業者が契約書をアップロードした際に、契約者の名前と携帯番号と生年月日を入力します。
すると携帯番号に基づいて、ショートメールが契約者に届きます。
ショートメールは簡単に送付できる反面、打ち間違えなどで、全く異なる人に届いてしまうリスクがあるのですが、生年月日等をアクセスコードにすることで、運用の利便性とセキュリティを両立させております。
契約者はアクセスコードを入力して、クラウド上にある契約書を確認することができます。そして、契約書に身分証の写真を添付することで、確認したことの証拠を残します。また、名前の情報から印影マークが自動生成され、契約者が「署名ボタン」を押すことで印影がもう1つの証拠として契約書に付与されます。
―『IMAoS』は不動産業界に特化した電子契約サービスです。法律的には大丈夫なのでしょうか。
検討いただく企業から非常に多い質問です。
宅地建物取引業法をクリアしているのか、本当に『IMAoS』で賃貸契約が成立するのか、ということですね。
まず、賃貸契約は「諾成契約」です。当事者の合意で契約が成り立つ、つまり口約束でも契約は成立するのです。賃貸契約を電子的に行うことは、法律上問題ありません。
―紙のやりとりがなくても、契約は成立するんですね。
『IMAoS』はスマートフォンのショートメールを利用しています。
スマートフォンって、肌身離さず持っていてる。また、他人のショートメールを見ることはできない。さらに、画面を開くためにパスワードロックを解除しなければいけません。かなり強い認証が働いています。
他人のスマホを開けて見るというのは、かなり難しいですよね。そして、契約者の生年月日等がアクセスコードになっている。更に、財布にしまっているような身分証を撮影して登録しなければいけない。つまり、複数要素認証をデジタルでできている。
一般的な不動産会社が、紙で契約書を管理するよりも高いセキュリティがかかっています。
―宅地建物取引業法という観点ではどうなのでしょうか。
宅地建物取引業法三十七条では契約の手段を定めておらず、あくまでも契約が成立したあとに、契約条件を記載した書面を交付することが法定要件であることを国土交通省に確認しております。また、借地借家法で書面での契約を定める定期借家契約は対象外であることもお伝えしております。、
『IMAoS』は紙でなくてもよい賃貸借契約を、スマートフォンやパソコンを使って「貸した」「借りた」の証拠を残すサービスです。構造自体は非常にシンプルといえます。