業務効率化で業界を変える
投資用不動産営業のためのツールを開発するPORT(東京・港区)。同社は投資用不動産販売会社の営業社員向けの業務効率化を促進している。
サービスの中で、営業社員のマイページを作成し、見込み客の顧客情報を入力すれば、社内に保存されている物件データとマッチングできる。融資を受ける際の銀行と金利を設定すれば、返済シミュレーションなどが簡単に提示できるようになる。見込み客への提案で必要な資料の一式が作れるという。
これはPORTの齋藤英晃社長自身が投資用不動産の営業社員として働いた経験から生まれたサービスだという。社員の業務を効率化することで、労働時間が減るだけではない。投資用不動産の販売というビジネスそのものを変えることを狙っている。
PORT・齋藤英晃社長(リビンマガジンBiz編集部)
「まず、不動産投資業界は世間一般からグレーな世界だと思われていることです。信用されていないんです。
その要因の一つがお客様に対して営業に関わる正確な資料を提示できていないことだと思いました。なぜ、資料が提供できていないのかというと、資料作成に膨大な時間を要するからです。お客様の年齢や状況によって、不動産を購入してからの収益シミュレーションを作ると、「何歳のとき」に「いくらくらいの物件」を「何戸」、「どういった目的」で持つのかを細かく見ていかないといけません。当然ですが、お客様の人生設計は、それぞれ全く異なります。それをお客様ごとに、収入の状況によって返済プランを考え、賃料下落の予測を出し、リスクの解析もする。
とても煩雑な作業で、エクセルでこなすには、非常に時間がかかります。営業担当社員が毎日、この作業をやるのは不可能に近いと思います。しかも、正確かどうかはわからない。
ここは絶対に変えなければいけないと思い『PORT』を開発しました。」
地道だが、正確な情報を提供するためのサポートをすることで、業界全体に良い波及があることを狙っているのだ。
業務効率化系のテック企業の多くに共通するのが、資金調達の難しさだ。
ベンチャーキャピタル(VC)などからの出資額はIOTやシェアリングに比べると少ない。あるキャピタリストは「事業領域が限定されていて、将来の成長を考えた時にアッパーが見えてしまう」と語る。もっとあけすけに「サービスが地味」というキャピタリストもいる。
下表は不動産テック企業の資金調達額をランキング化したものだ。
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不動産テック企業の資金調達額を見ると、20位までに入っているのはイタンジのみだ。上位はシェアリングやIOTに席巻されている。
対外的な発信力や、ビジネスを根本から覆すといったわかりやすさにかけるのは事実かも知れない。不動産ビジネスの知識の薄いメディアや金融の関係者には、業務効率化の効用はわかりづらいのかもしれない。