ベェイシック・出川久敏社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―ポータルサイトと不動産会社の間でズレが生じていたのでしょうか。
当時、私の会社では、1店舗につき、毎月売上330万円が損益分岐点でした。しかし、「カリヨッカ」を使っておとり物件を排除したことで売上が200万円台になってしまったんです。全店舗で毎月500万円ほどの赤字でした。
「カリヨッカ」を使って不動産業界を良くしていきたい。
「カリヨッカ」で賃貸仲介ができるスキームを作って、プレイヤーには地域の方々とのコミュニケーションや大家との交渉など、プロの仕事をして欲しいという思いで歯がゆかった。
しかし、まー失敗しましたね(笑)。
おとり物件は減らないし、会社の売上が2分の1になったシステムなんて売れないじゃないですか。
某ポータルサイト運営会社や宅建協会、公取まで行き、買い取って全国に普及をお願いしにも行きました。(笑)
―おとり物件がなくすことがサービス当初の目的だったんですね。
おとり物件は本当にくだらない商習慣です。
Amazonで商品を買って、夕方に商品が来ると思っていたのに「商品がありませんでした」というメッセージがきたら、みんな怒ると思います。そんなことが横行している不動産業界、そして物件ポータルサイトに腹が立ちました。
当時の社員にも「おとり広告は作るな」「そんなクズみたいな仕事してんじゃねえ」といつも怒っていました。
そして2017年に会社を閉め、『住むサポ』の開発に専念したんですね。
ポータルサイトを活用せずに集客できる方法は何か。そういったところから、まずは入居者がお得に暮らせるアプリとしてユーザーが集まり、不動産会社もメリットがあれば必然的に利用してくれるだろうという構想が生まれました。
―ポータルサイトの弊害は、広告費だけではなくて業務にもあると言うことですね。
私は、お客様と実際に会って接客するのが不動産業(不動産人)だと思っています。
皆、効率化を求めすぎているます。「物件情報を打ち込めば良い」と考えている会社が多い。すると、最終的に儲かるのはポータルサイトだけ。ポータルサイトに迎合していくのは何か違うのではないかと。
1人で独立したとき、案件は紹介だけでした。
私という人間を知ってくれて信頼関係も築いているから決めてくれるんです。お客様は人やプレイヤーに沿ってくれると思っています。
「不動産のことだったらこの人」という関係値を作ることこそが不動産のプロなのではないでしょうか。そういったプロ意識がない不動産プレイヤーが増えたのか、ITがそういったプレイヤーを生んだのか。
管理物件の取得にしても、本当は大家やその家族との茶飲み話が重要なんです。それができないプレイヤーが多い。
任意売却でも、ローンに困っている人が分かれば、行きつけの飲み屋に行って、最初は飲み仲間になるところから始めるんです。その後に手紙を送ることで信頼関係ができる。
こういった人間的な付き合いこそが不動産会社の仕事だと思っています。これ、不動産テックのインタビューなのにすいません(笑)
ベェイシック・出川久敏社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―今後の目標はありますか?
まずは、入居者に使ってもらうことが第1ステージです。
不動産会社の脱ポータルサイトが難しいのであればtoCから始めます。家を借りたら『住むサポ』、賃貸生活の裏ワザアプリというイメージを持ってもらいたいと思っています。
そして、第2ステージとしては、集まった入居者データによって退去のタイミングを予測するなどができればと思っています。
第3・4・5とステージは決まっています。
『住むサポ』を通じて、ポータルサイトに関連した無駄な作業から解放して、本当の意味でのプロになって欲しいと思っています。