遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。
これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。
今回は、カンボジアで法人を立ち上げ、無償の技術人材育成や、VRサービス『terior』を提供するラストマイルワークス(東京・新宿区)の小林雄社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)
ラストマイルワークス・小林雄社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―サービスについて教えてください。
東南アジアの不動産業者向けにVRサービスを開発しています。
『terior digital city』といって、コンドミニアムのデベロッパーにタッチパネルのサイネージやヘッドマウントディスプレイを付けたVRなどを提供しています。
これからできる建物などをCGで作成して、5年~10年後にできる町並みを可視化してショールームや展示会に使ってもらっています。
最近では、ゲームなどに使われる「リアルタイム」という技術を使い、簡単にシミュレーションができ、フォトリアル(※)に作れることが強みです。日照時間やインテリアの変更、家具の配置換えなどが簡単にできます。東南アジアのマーケットは活況で、不動産バブルで市場が拡大していますので、ニーズが高まってきています。
※注=写真のようなCG画像を作ること
―日本国内のマーケットには提供していないのですか。
まだ、日本向けにはリリースしていません。ただ、日本国内でこういったVRに特化した事業をやっている会社はまだあまり多くありません。そこで日本向けにも販売できように開発しています。
日本向けには『terior(テリア)』というサービス名で、大きく2つに分かれています。1つは「バーチャルホームステージング」もう1つが「VRモデルハウス」というものです。
日本の不動産業界では360°カメラを撮影したサービスが流行りつつありますね。ただ、その使い方は限られていて、不動産会社側もITやVRのリテラシーが低く、活用方法が分からないという課題があります。そこで当社では使い方も含めて、提案していこうと思っています。
ラストマイルワークス・小林雄社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―詳しく教えてください。
「VRモデルハウス」は建売業者向けのサービスです。
従来では、建物が実際に完成してからでないと販売しにくかった。でも、デベロッパー側はなるべく早期に販売したいはずです。そこで、パノラマ撮影した更地の写真にCGで、完成予想図を作り、半年~1年後の状態を構築することで、青田売りできるに活用していただいています。
「VRモデルハウス」(画像=ラストマイルワークス)
建物に関する情報を詳細にもらい、外観だけではなく、内観も忠実に再現しています。
―どのくらいの忠実なのですか。
情報が重要です。図面はもちろん、建具はどこのメーカーの何を使うのかまで、実際に建てるときの情報を全部反映します。例えば、トイレもメーカーや製品番号まで聞いて、作ります。
―どれぐらい早期に売却できるのでしょうか。
建築確認取得後、書類さえ揃っていれば、最短2週間でCGが完成します。
通常であれば、建築確認取得から建物の完成まで6カ月ほどの時間が必要です。そこから集客を行うのですが、「VRモデルハウス」を活用すれば、建築確認取得の翌月には販売活動が可能です。
―利用企業はどれぐらいあるのですか。
現在、約20社です。100以上の現場で使っていただいています。
VRを活用したサービスは、2016年から始めました。当時はVRそのものの可能性が理解されていなくて、我々も手探りで開発していました。紆余曲折あり、2018年の4月頃に不動産向けのサービスにフォーカスを絞りました。
最初、ゲーム系の技術やヘッドマウントディスプレイを使って、VRサービスを販売していたのですが価格面や納品後にどうやって使ってもらうかなど、課題がたくさんありました。
また、我々と不動産会社の間で盛り上がっても、エンドユーザーにとってメリットにならないアイデアも多く、上手く機能しないことがたくさんありました。
私の意見では、ヘッドマウントディスプレイは現在の不動産ビジネスと合わないと結論づけ、手探りしながら今の形になりました。
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