遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。

これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

今回は、レンタルオフィスやバーチャルオフィス、貸し会議室を運営するリージャス(東京・新宿区)・西岡真吾社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

リージャス・西岡真吾社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―リージャスが日本に進出して20年になります。シェアオフィスはコワーキングオフィスとも呼ばれるようになり、新しいビジネスや働き方を創出する不動産テックの1つと認識されるようになってきましたね。

海外からそういった流れが日本にも入ってきていますね。私はリージャスの日本進出とともに、入社しました。もう20年になります。

当時は欧米ではサービスオフィスとか、フルファーニッシュドオフィスといった呼び方があったんですけど、日本ではよく意味が伝わらない。1年ぐらいは「サービスオフィス」とか呼んでたんですが、なかなか浸透しないということで、「レンタルオフィス」という呼び方にしました。

今のコワーキングという呼び方は、フリーランスや小規模での起業が増えてきたことが関係しているのでしょうね。従業員を増やさずに、他の会社と協業していくなかで相互に補い合っていくという仕事の進め方が求められているのかもしれません。

2017年から展開しているオフィスブランド『Spaces』は、まさにコワーキングオフィスと呼ばれるものなのでしょうが、あまり言葉の定義にはこだわっていません。少し前には、ノマドワーキングという言葉もありましたしね。サテライトオフィスという言い方もありますし、当社は新しいオフィスのコンセプト全てを包含したビジネスモデルを展開していこう思っています。

SPACES大手町ビル(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―グループとして提供していきたいのは、利用者に適したオフィスの使い方ということですね。

そのとおりです。

お客さまのニーズは、どんどん多様化していっています。必ずしも業界の動き、ニーズが一方向に動いてるとは、まったく思っていません。コワーキングオフィスでネットワークイベントが役に立つという人もいれば、集中できる環境が欲しいのであってイベントにお金を出したくはないという人もいる。もう千差万別いろんな方たちがいらっしゃる。

それに対して、どう応えていくいくかと考えると、われわれは多ブランド戦略をとるべきと判断しています。例えば住宅の世界では、マンション1つとっても、1億円・2億円っていう超高級マンションを探してる人もいれば、そうではない中古の価格帯の安い1,000万円、2,000万円を探してる人だっていらっしゃるんです。エリアだって、都心が良い方もいれば、静かなところが良いという方もいる。それを1つのマンションブランドで、億ションから1,000万円、都心部から郊外まで全てをやってる会社はなかなかないじゃないですか。

同じように我々も多ブランド化で様々なオフィスニーズに応えたいんですよね。

―業界では、リージャスは新しい形のオフィスを日本に持ち込んだ第一人者だという印象があります。第一人者だから、多くのブランドで、全てのニーズを取り込むというのは分かります。ただ、やはり単一のブランドに特化している企業と戦うのは、営業や運営のコストの点で大変じゃないですか。

我々は、コワーキングオフィスやリージャスの複数ブランドを、1人の営業担当がご紹介しています。エリア全体を担当して、全てのブランドを担当するのです。また、契約書は1種類あるだけなんです。その他のオペレーションも、基本的にはまったく同じなんですよ。

これは、オフィスのサービス担当スタッフも同様なんです。だから、ちょっと人が足りないからリージャスの事業所から『Spaces』に応援に来ていたりします。

そういった柔軟な人材の動きがあるので、多ブランド化によって、オペレーションコストは上がることはあまりないんです。

それに関東エリアだけでも、オフィス需要はものすごく大きなボリュームがあります。1つの企業から相談を受けたときに、単一のブランドしかなければそれに合わなければ終わり。次の会社にいくしかない。でも、複数のブランドで何にでも対応できれば、そのお客様のニーズに全て応えられるかもしれない。むしろ効率が良い部分があるともいえるのです。

>>次のページ:日本のオフィス市場を見続けて、現れた新しいニーズ(2ページ目)

 
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