ロードスターキャピタル・岩野達志社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―今後、競合他社の参入もあると思います。先行者利益がどのくらいあるのでしょうか。
不動産のマーケットは数十兆円規模、1社でそれ全部をおさえようと思っているわけはありません。せめて10社ぐらいは参入して、その中で切磋琢磨していくべきでしょう。監督官庁との交渉という面でも、いろいろな会社さんと一緒に盛り上げていきたいと思っています。
―不動産価格推定のAIチェッカーも開発されていますね。
はい。
社内で不動産の投資判断を行う際、会議で「この物件は良い」「この物件は悪い」と言い合うんですが、大体みんな同じ意見なんですよね。1人が良いという物件は、皆が良いと思っている。そして、皆が悪いと思うときも同じです。
皆が同じだったら、もうそれは数字だけで解決できるのではないか、という仮説からAI-Checkerの開発をスタートしました。
そこで様々な不動産鑑定のデータを集めて、AIに判断させてみました。概ね問題はないものの、現状では単なる統計解析と一緒でした。人工知能で学ばせるほどにはデータが豊富ではなかったんですね。さらにデータを集めようとしたところ、あまり正確ではない鑑定会社のデータも入り込んできて、解析精度に大きなブレが出てきてしまうことになりました。
本当に使えるレベルにするには、時間がかかると感じています。
岩野社長が考える不動産マーケットの現状
―日本の不動産マーケットの現状についてはどう分析されていますか。
まだ当分は良い状態が続くと思っています。
不動産のマーケットは、世間の景気に少し遅れて連動します。一般の事業会社がしっかり収益を上げていて、オフィス拡張のニーズが豊富にある。そのおかげで賃料が上がっていくという良いサイクルが続いていると思います。
昨年頃まで、2018年には東京都心で大規模新築ビルが大量供給され、供給過剰によって市況が悪化するという懸念もされていました。蓋を開けてみると空室率は非常に低く、大量の供給を吸収できているという情勢です。企業の業績が好調で、2017年度の税収もバブル期並みと言われていますし、やはりマーケットとしては非常に力強いものがありますね。
世界的な比較では、シンガポールや香港や上海、北京と比較して、日本の不動産は高くない。いや、むしろ非常に割安です。下手したら台湾より安いので、それはおかしいと感じられるのではないでしょうか。
ロードスターキャピタル・岩野達志社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―スルガ銀行問題などで地銀の不動産融資姿勢が厳しくなっています。
やはり個人向けにフルローンをどんどん出すのはリスクが高すぎるとか、地方で需要がないところにアパート建てるのは良くないなど、当り前の話です。
景気の良いタイミングで、こういう問題にフォーカスがあたることで、ちょっとした差し水になる効果がありますよね。
銀行にしても、適切なリスクコントロールをして、ある程度のブレーキを踏みながら融資を行っていく必要がある。今は、少し昔に比べて銀行が厳しくなったというよりも、正しく質問やチェックをするようになったといえます。物件の中身もしっかりヒアリングしてきます。
少し前までは、鑑定評価を出したら、「じゃあファイナンスします」みたいな時期もあったんです。そういう頃に比べると、テナントの状況を確認するなど、あるべき姿に戻ったといえます。そうやってあるべき姿勢の中で、しっかりとリスクコントロールされていれば、多少マーケット環境が崩れたとしても、吸収できると思えるわけです。
そういった意味ではクラウドファンディングはマーケットの安定化にも寄与できると思います。
クラウドファンディングが、不動産と金融を結ぶ1つのインフラにまでなれば、いざ本当に機関投資家とか金融機関のお金が市場に流れなくなったときでも、個人のお金がマーケットに流れ込む仕組みとして機能します。そうなれば流動性が保てる。リーマンショックの時のようにマーケットから2~3割がすとーんと落ちるようなことにはならない。
―クラウドファンディングの成熟、発展はマーケット全体にとってプラスの効果があるというわけですね。
はい。
そういうインフラがあれば、金融機関も融資を止める必要がなくなります。例えば銀行が融資を止めた瞬間、流動性がなくなるというのが見えてくると、最初に止めた銀行が勝っちゃう。全部、貸しはがししたところが勝つなら、我先にと始まってしまう。
個人のマネーが下支えするのであれば、金融機関は貸しはがしをする必要がなくなるので、マーケットも安定していくと思います。
そういう、本当に市場全体に資するようなクラウドファンディングの可能性が世間に認識されるよう、良質な不動産のクラウドファンディング事業を進めていきたいと思います。