遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。

これまでの商慣習や仕組みが劇的に変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

今回は、貸し会議室の予約サービス『スペイシー』を提供するスペイシー・内田圭祐社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

スペイシー・内田圭祐社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―『スペイシー』について教えてください。

『スペイシー』は格安貸し会議室の予約サービスです。プライバシーを保てる個室会議室が1時間500円〜1000円というリーズナブルな価格で利用できるのが、ビジネスマンに受け入れられ、約260万人のユーザーの方にご利用いただいています。物件は全国に約5,000件掲載されています。

なんでそんなに低価格で貸し会議室が利用できるかというと、会社の空いた会議室や英会話教室の空き時間などを『スペイシー』を通じてシェアすることで低価格の会議室を実現しています。

―会社設立当初から、会議室の有効活用などのサービスをやられていたのですか。

今の会社では最初から『スペイシー』しかやっていません。

元々は、リクルートスタッフィングというリクルートグループの派遣会社での勤務から、

ウェブマーケティングの事業で独立したのが、起業家としての始まりです。そのときにアルバイト、業務委託を含め30人ぐらいの所帯にまでなったんですが、毎月の売り上げ増減が激しく、もっとスリムな組織を目指し、従業員を4人まで減らしたんです。

そうしたら、オフィススペースが余るんですね。当然、移転しようと考えるわけですが、オフィス移転が4カ月前に予告という条件だったんです。だから、しばらく30人分くらいのオフィスで4人が仕事やっていました(笑)

そこで、そういった「あまったスペースを有効に活用したい」「部分転貸できないだろうか」と考えました。しかし、集客したり、ホームページ作ったり、運営したり、料金の徴収をしたり、ビルオーナーに交渉したりするとなると、結局そのときは面倒でしたのでやりませんでした。

でも、「こういう、スペースが無駄になることがあちこちで見えないけど起きてることだろう」と思ったのが今やっているスペイシーの事業である場所のシェアリング事業に興味を持った考えたきっかけなんです。

それで少し調べたら、当時は会議室のシェアリング、予約サイトなど全く整理されていませんでした。ですので「これは可能性あるのではないか」と思って『スペイシー』を始めました。それが2013年のことです。

―登録してもらう会議室はどうやって集めたのでしょうか。

貸し会議室を運営している会社に営業しました。ポータルサイトのような存在なので「ひとまず登録しておこう」というくらいで、営業すれば載せてもらっていました。

我々より以前は、時間単位でオフィスをシェアリングするサービスはほとんどなかったと思います。駐車場のシェアサービスもまだありませんでした。

そもそも、スマホなどのデバイスが発達してきたから、サービスを提供する側も増えてきました。みんながスマホのデバイスを持つようになって、決済ができるようになった。検索して予約するということもそうです。時期でいえば2013年頃から、そういったビジネスが成り立つ土壌が育ってきたというのはありますね。

―それから、気付けば約5年経って、ライバルといえるようなサービスもたくさんありますよね。それらとの差別化ポイントはどこでしょうか。

利用頻度が高いビジネスユーザー層を狙っていることです。

会議室にはいろいろな使い方があります。なかでも「社内に会議室がない」とか、「外で打ち合わせする」とか、そういったシーンを重点的に取りにいっています。また、「そんなに格式張ってはいないけど、個室が欲しい」というニーズはビジネスだったら年間で数回はあります。他社のサービスよりも利用してもらう頻度が高いのではないかと思っています。

また、「このエリアは利用頻度が高い」といったデータの分析もしながら、会議室自体を増やしています。使われると稼げるので、連動するように物件が増えていきます。

―神保町の出版社で働いている知り合いが、よく『スペイシー』を使っていると言っていました。編集会議などになると、20人くらいが集まったりするときに、社内の会議室が足りないから便利だと言っていました。

まさに利用頻度が高いエリアの一つです。そのニーズに連動して登録物件数も増えています。

―ビジネス需要以外の開拓についてはどう考えていますか。

実は、『スペイシー』をやり始めたときは、スペースを借りたい人のニーズは夜間や土日が多く、「仕事のない時間帯で何かのレッスンをする」といった人が多かったんです。ビジネス需要はあまり取れてなかったです。

でも、いずれはビジネスがメインになるだろうと思っていて、ビジネス向けのマーケティングを重視したので、会議室などで使われるようになってきたって感じです。だから、ビジネス以外のニーズがすごく多いことは意識しています。

―ビジネスとそれ以外の利用割合はどうなっていますか?

今までの累計でいくと8割がビジネスで、2割がそれ以外です。現状も、月2万件の予約があり、8割ぐらいはビジネスで使われています。

登録されている5,000室の稼働率でいえば、1カ月に1回は必ず利用があるのは1,000物件ほどです。稼働率という意味では、時間単位なのでどう捉えれば良いのか非常に難しいのですが。

また、いろんな物件が登録されているのも特徴です。飲食店とか、かなりの地方の物件などです。あまり利用されないような物件もあります。しかし、そういったニッチなニーズも、年に1回の利用かもしれないけれど、登録されていることが重要だと思っています。

>>次のページ:『スペイシー』から見えてくる新たなニーズ(2ページ目)

 
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