スペースエージェント・出光宗一郎社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―そもそも、不動産業界や民泊業界を対象としたサービスを始めた理由は何だったのですか。
まず、私が銀行出身で、不動産業界を一時期担当していました。企業調査部っていうセクションで、業界のマーケットを分析したり、銀行の融資先の不動産会社を相手分析したりしていました。すると問題がある不動産会社が本当にたくさんあることが分かったんです。
一方でオルトリズムの創業者の紙中は、私と同い年で、彼は当時店舗の仲介をやっていたんですが、よくよく話を聞くと考えがすごい共感するところが多かった。
伝え方が難しいんですが、最終的に契約する物件を購入するだとか、賃貸で貸し出すっていうユーザーが、きちんと得をする仕組みを作らないといけない。また、空き家がどんどん増えていくなかで、業界も大きく変わらなければいけない状況になってきている。「じゃあ我々で何ができるんだろうね」といった思いで始めました。
―紙中さんは内側から思っていた業界の不満、そして出光さんが感じた外側からの不満が合わさったのですね。
まさにそうです。
当社は、あらゆるリスクを背負って、新しい分野に投資をしていると思っています。これからも皆が驚くような挑戦をしていく予定です。失敗したら失敗したで、おしまい。その時は、あきらめようっていうような考えです。
だから、今、取材いただいてるんですけども、1年後、2年後にはなくなってるかもしれないです。(笑)
でも、どこかが引っ掛かれば、不動産ビジネスの中に何か爪痕を残せればなあとは思っています。
―不動産業界のテクノロジー化において課題は何でしょうか。
不動産業界だけではなく、不動産テック業界にも問題があると思っています。
私は、不動産テックサービスを提供していてうまくいかない業者というのは、アナログの部分を大事せずに、全部テックで完結させようとしているからだと思っています。
一般の消費者が何度も行うことではない高額な商品を取り扱うには、やはり専門的な職位業はこれからも必要です。例えば、メルカリのような完全にIT化したCtoCのサービスなどは成り立たないと思っています。
―不動産業界はCtoCまではいかないっていうことですね。
そうです。
そこでどう関われるかというと、ユーザーの行動や信用力、物件の収益力や流通力、不動産会社の信用力などを過去の蓄積データから分析しスコアリング化することで、マッチングの精度を高めたり、最適なコンテンツ・運用方法を見出す部分を手伝ってあげたいと思っています。不動産会社は必要ですが、価値を提供する会社だけが生き残るような仕組みや、エンドユーザーが物件を探しやすく、不利益を被らないというサービスに関しては、不動産テックでできることだと思っています。
―アナログを大事にしながらテクノロジーを浸透させていく。かなり難しいように見えます。
不動産業界で働く方には、物件の収益力や流通力の向上に事業を集中して頂き、技術的な知識はいらないと思っています。当社がテック部分を全て提供しますし、本当に良いサービスって、そういうのが理解しなくても使えることだと思っているので。
技術的にどこが優れてるとかっていうのが分からなくても、結果的に「売上が上がってる」「顧客が満足している」「不動産の価値が向上している」ていうのを、根拠で示せればこの業界は浸透していくのかな、と思っています。
―今後の目標はあるのでしょうか。
不動産分野に特化したフィンテックに参入したいと考えています。不動産投資は唯一、ユーザーの信用力に頼ることなく、融資が実現できる分野であり、ユーザー、物件、不動産会社を全て徹底的にスコアリング化した上で、正確なデフォルト率を見極めます。当社でファイナンスまでを実現し、年齢や勤務先、年収、自己資金に関係なく、不動産投資できる社会を実現できればと考えています。