イタンジ・伊藤嘉盛社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―伊藤社長のキャリアを振り返ると、もともと不動産業界にいて、そこから不動産テックの会社をつくって、さらにホテル事業でまたリアルに戻ってきた。と考えることもできると思います。
そうですね。
「リアルとテックをあんまり線引きしない」っていうふうには思っていて。これまで発表してきた『nomad cloud』や、『ぶっかくん』はリアルの不動産会社で培った経験から生まれたサービスです。
これから日本全体でインバウンドが重要になっていく、不動産業界も絶対に無視できないトレンドがある。ホテル事業というインバウンドど真ん中のビジネスを知ることで、テクノロジー化できる部分を探すことができると思います。
今はインバウンドに対して、ただ外国観光客としかとらえていません。
でも、不動産業界にいる人達は「今いる入居者が外国人に変わる」「家賃を払ってくれる人たちが外国人に変わっていくかもしれない」という切り口とらえてみる必要もあると思います。
これから日本では人口が減って、逆にインバウンドが増えて、今まで日本人に家を貸していればお金になり大家ビジネスが成り立っていたものが変わっていく。これからは外国人が出入りをするホテルのように、日替わりで入居者が変わっていくビジネスになっていくかもしれない。
そういった変化を見据えて、テクノロジーで何ができるかっていうことを考えています。
―そんなに大きな変化がおきていくと考えているわけですね。
10年ぐらいの時間をかけて、徐々に変化していくと思います。仮に人口が8,000万人になって、観光客が2億人になったときにどういう世界になるかを考えることは無駄ではないと思いますよ。
―そういった将来の変化に備えることが重要だというわけですね。では、現状で不動産業界のなかで、特にこれが問題だなと考えていることはどんなことでしょうか。
まずは、REINSのオープン化ですね。
限られた情報では駄目なんです。やはりオープンなデータがなければIT化は難しい。
Googleができたことで情報のあり方が変わり、世界も変わりました。Googleがなくなったら、みんな困りますよね。でも、日本の不動産業界に関しては「Googleはいらない」「やるな」ということになっている。Googleのよう存在がない世界では、IT化された社会はあり得ないです。
当社では、『ぶっかくん』などの管理会社に向けたビジネスをやっています。そこでリアルタイムの空室情報が手に入る。一定程度データ集まった時点で、情報をうまく公開して、不動産取引が透明化するような動きにつながれば良いですね。
―未来の話が出てきましたが、これから不動産業界が大きく変わっていかなければいけないときに、イタンジはどういった存在になっていたいと考えていますか。
うーん、どうでしょうか?
―例えば社員数などで目標やイメージするところがありますか。
何人くらいの会社になっているか、そこはあまりこだわってないです。
売上1兆円で社員数20人の方が良いですよね。そんな会社はないと思うかもしれませんが、それは現在の常識でしかなくて、正社員とか、業務委託とか、クラウドワーカーとか、私はそこに線引きしてないんです。
売上が大きくなれば関わる人が、外部も含めて必ず多くなります。別にそれが社員である必要もないので、社員数何人とか、そういう目標はないですよね。
それよりも、社会的な影響、貢献度が大切です。やはり、「不動産の取引で嫌な思いをする人が少なくなる」というのが一番目標とするところですね。