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イタンジ・伊藤嘉盛社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―イタンジには面白い取り組みがあると聞きました。発案者の案はどんなアイデアでも否定せずに、取りあえずやってみようという決まりになっているそうですね。

はい、創業当初は、私が独断で事業を作っていました。

しかし、あまり上手くいかないことが多かった。創業から2年ぐらいで、倒産するかどうかの危機までに至ったことがあったんです。そこで、大きくマネジメントのやり方を変えました。もっと、現場で生まれたアイデアを、現場で試して、どんどん進めていくということを考えてきました。

トップが盛り上がっているだけではダメで、みんながワーッとやっていくものをイメージしているんです。

―そういったカルチャーの中から、今年はホテルを開業するなどテクノロジーにとどまらない事業をやっていますね。

ホテルは私が一担当者として、取り組みました。

―8月1日にオープンしたホステル『KIKKA』(東京・東神田)にはどういった思いがあるのでしょうか。

今のファイナンスの世界は、結局キャッシュフローでしかものをとらえていないように思います。しかし、キャッシュフローだけではなくて、社会性や地域に役立つデザイン、観光資源になるようものは「地域の宝」といって良いはずです。観光の目玉になるようなホテルを作れば、それだけ地域に貢献があるわけです。

2018年8月にオープンしたホステル『KIKKA』(東京・神田)コンセプトは「きっかけを想像するホステル」(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

ブラウンを基調とした落ち着いた部屋だ(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

でも、そういったものは全く、融資とか投資には反映されていません。利回りだけで物事が決まっていく。そこに、利回りだけじゃなくて、そういう定性的なものも織り込みながら、利回りが決まっていく不動産投資のあり方を作っていけたらいいなあ、という思いがあります。

「この事業は地域のためになるんです!」と言っても、金融機関は「金利を安くします」とは、なりません。しかし、例えばクラウドファンディングであれば、そういった取り組みはありますよね。

一般の方からの投資ではあり得るのに、プロの金融ではどうしてもシステマチックになっています。そこに一石を投じてみたいんです。

ホテル以外の不動産でも、同じです。

今は金余りの時代です。その余っている金という物差しで、全てのものの価値を判断していて、本当に正しい評価ができるのかと思うんです。例えば、有名な漫画家がたくさん輩出されたトキワ荘が残っていたならば、その価値は一体いくらだったんだ、と思いますね。

―なるほど。確かに面白い視点です。少し、テックに話を戻したいのですが、良いサービスでも、普及するサービスと普及しないサービスがあります。不動産テック企業のなかでも、撤退や方針転換をせざるを得ない事業者もあります。既存の不動産ビジネスを知った上で、プロダクトを作ったところが成功しやすいのでは?という風潮があります。その点についてはどう考えていますか。

そうですね。ITを知っている人が今から不動産を学ぶよりも、不動産を知っている人がITを学んだほうが良いんではないか、ということですね。それは例えば、「仕事できないのに英語だけできる人より、仕事ができる人が英語覚える方が絶対いい」というイメージに近いかもしれません。やはりビジネスを知っておくことは重要だと思います。

―既存の不動産ビジネスを知っているからこそ、変革するポイントがわかるということですね。

既存のビジネスの慣習をIT化していくのならば、今からは取引の電子化がキモになると思っています。しかしそれは、サービスだけではなく、法改正もセットで必要です。

契約書が電子化されてない中で、やりとりだけを電子化しても、最後には直接会わないといけない、原本を郵送しないといけない、印刷しないといけないと、いろいろなハードルがあります。

今、まずは重要事項説明がIT化して運用されていますが、いずれその次の契約書を電子化しましょう、という話になってくると思います。その辺りに照準を合わせてビジネスを展開していきたいですね。

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