2018年6月11日・21日の二日にわたり、不動産経済研究所主催による住宅・不動産テクノロジー(TECH)フォーラム「不動産テックのすべて」が開催された。
不動産テックのリーディングカンパニー28社が登壇し、不動産業界におけるテクノロジーの可能性や、自社のサービスが業界に与える影響について熱く語った。
今回は、前半6月11日に行われた14社の様子を紹介する。(リビンマガジンBiz編集部)
2日目の様子はこちら
不動産テックの現在と未来
NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティングユニット 川戸温志氏
NTTデータ経営研究所・川戸温志氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
ITや先端テクノロジーを活かした事業戦略やコンサルティングを行っているNTTデータ経営研究所は、主に海外の不動産テック企業を事例として取り上げ、現在の不動産テック業界における潮流と将来の動向についての考察を紹介した。
「データ」「一気通貫」「異業種」という3つのキーワードが、今後の不動産テックのトレンドになる述べた。
それぞれのキーワードをもとに、テック系ビジネスにおいては、これまでのコスト重視の戦い方で勝てず、「データ」を活用した価値重視の戦い方が重要になってくる。業務プロセスを「一気通貫」で対応し、データやユーザーの声を即座にフィードバックできる企業が勝ち残る。ロボット掃除機『ルンバ』による室内のマッピング技術といった、「異業種」との関係構築によって、新たなビジネス機会が創出される。といったことを予想した。
空の産業革命、ドローン不動産活用と自動飛行ソフトの開発
CLUE 執行役員 榊原知也氏
CLUE・榊原知也氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
CLUEはドローンの自動操縦アプリを開発やドローンを活用した確認事業などを展開している。今後、ドローン活用が飛躍的に拡大することで、「ドローンが当たり前に飛び交う社会」が実現するという。
不動産業界においては「インスペクションでの活用」「調査におけるコストカット」「安全性の確保」などへの活用が広がっていく一方で、今後はオペレーターや操縦士を必要としない自動操縦が主流になってくることを主張した。
IoTで物件価格向上!スマートホームデータでユーザーニーズを探りましょう
リンクジャパン CEO 河千泰進一氏
リンクジャパン・河千泰進一氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
スマートホームや、スマートハウス用のデバイスを提供するリンクジャパンは、IoTデバイスを使って家をスマート化し、物件の付加価値を高めることができると述べた。
高齢化社会における「見守り」のニーズや、共働き家庭増加による「ホームセキュリティ」、生活の「効率化」といった社会問題をIoTによって解決し、安心して長期間暮らす住まいの実現を目指している。
土地のポテンシャルを把握する地理情報データ基盤
SengokuLAB 代表 仙石裕明氏
SengokuLAB・仙石裕明氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
SengokuLABは、都市や位置情報データの研究を通じて、不動産業界への活用を構想している。
仙石博士が研究している地理情報科学は、現状では画一した「テック」ではなく、まだ研究途上の「サイエンス」であるとしたうえで、行政や各自治体のオープンデータを活用することで、あらゆる予想や分析を可能にする理理情報サービスの提供の夢を語った。
「SYMMETRY」の展開~VR×オンラインコラボレーション設計
DVERSE Inc CEO 沼倉正吾氏
DVERSE・沼倉正吾氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
建築や土木業界向けのVRサービス『SYMMETRY』を提供するDVERSEでは、設計や建築のシーンにおけるVR技術の有効性を紹介した。
ゴーグルを使ったVRによって、実寸で確認作業を進めることができる点や、複数人が同時にVR世界での打ち合わせを可能にすることにより、これまでの建築設計の工程において大きな時間短縮を図ることを可能にしたという。
VR無人店舗「どこでもストア(R)」の活用による不動産業の未来
ナーブ 代表取締役 CEO 多田英起氏
ナーブ・多田英起氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
ナーブは、内見業務の効率化を目的としたVRサービスや、無人店舗サービスを提供している。
接客や営業アプローチにおける情報密度によって、購買行動にどのような変化が起きるのかを紹介した。VRによる仮想体験が静止画と比べて10万倍の情報があること、これまでの「購入してから体験する」プロセスから、「体験してから購入する」プロセスに変化していくといった購買行動の変化により、無人店舗×VR活用によって効率的・効果的な接客ができると述べた。
マンションサイト「マンションレビュー」のユーザー動向と運営
グルーヴ・アール 代表取締役社長 川島直也氏
グルーヴ・アール・川島直也氏(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
マンションの適正価格や口コミが確認できる『マンションレビュー』を提供しているグルーヴ・アールは、同サービスに訪問するユーザーがどういった情報をどのタイミングで欲しているのかを紹介した。
例えば、マンション名を直接検索して訪問してきたユーザーは、他社ポータルサイトでの物件探しをした後に、その物件の口コミを探している可能性が高く、物件内覧や購入決定の意思決定に活用している可能性が高いという。ユーザーが求めている不動産情報には、物件の基本スペックや価格以外にも、口コミや物件偏差値といった第三者的な指標もあることを強調した。