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軒先・西浦明子社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―オーナーではなく、不動産を借りている入居者・テナントがスペースを貸し出す場合は、どういった手続きが必要になりますか。

管理会社やオーナーから許可が得られれば、すぐに始めることができます。ただ、管理会社は、どちらかというとシェアサービスを「面倒くさい」と感じられているところがまだまだ多いです。貸し出して得た収益をシェアするスキームもあるのですが、管理会社は比較的保守的な会社が多く、オーナー第一で動いています。そこで、新しいことを提案してトラブルが起き、管理を外されたら困ると感じているようです。

その一方で、オーナーの収益につながる新しいことに積極的で、ポジティブな考え方を持っている管理会社には導入してもらっています。他の管理会社との差別化になると考える企業もあるようです。

―多くの管理会社は今のビジネスに対する危機感があまりないのでしょうか。

ないところがまだ多いと感じます。しかし、「これじゃまずい」「差別化しないと」と考え、他の会社にはないサービスを提供して、オーナーとのリレーションを強固にしてきたいと感じられている会社も増えてきています。

特に今、賃貸管理ではM&Aが活発です。何もしないでいると、大手に負けて、最悪の場合吸収されてしまう可能性もあります。そういった背景から、シェアリングサービスにトライしてもらえる企業も増えています。

―オーナーからの潜在的なニーズを把握していない管理会社が多いのかもしれません。

そういった傾向は、マンション管理会社に比較的強いと感じます。賃貸管理会社の場合は、オーナーは完全な素人ではありません。一方で、マンションの管理組合は一般の方です。そこに情報格差がすごくあります。管理組合から当社に話が来て、管理会社が渋々対応する、というケースもありますね。

―『軒先ビジネス』には全国展開するドラッグストアなども掲載されています。企業から「有効活用したい」という要望があるのでしょうか。

他社での成功事例などご覧になった小売チェーンから、店舗の軒先を「活用したい」という要望が増えてきていますね。

大手企業は、何か新規事業をやりたいと考えているところが多く、シェアリングに行き着く形が多いですね。顧客を持っていて、アセットもある。しかし、新規にITサービスを開発するのは難しい。そこで当社に話が来ることが多いです。

2017年には静岡ガスへOEMでのサービス提供を始めました。当社ではなく、静岡ガスが主体となって『SHIZGASエネリアパーキング』というサービスを展開しています。静岡ガスでは富士宮市と協定を結んで「富士山に観光される方に向けて駐車場を貸しませんか」と市民に呼びかけ、渋滞緩和や観光促進につなげているようです。

自社の『軒先パーキング』を拡大させていくことも重要ですが、エリアに強い企業が自社のサービスとしてひろめたいという要望に関しては、OEMをすることでサービスを提供しています。

―これまでの不動産取引になかったシェアリングという収益モデルによって、不動産の価格や価値観に新しい基準が生まれそうです。

今はまだ、オーナーがそこまでの発想に至っていません。単に自分が持っているアセットがお小遣いを稼いでくれる、という感覚ですね。でも確かに、自分の持っている不動産の価値自体が高まると感じてくれればとても嬉しいです。「収益を生む。価値のある家なんです」と思ってもらいたいです。

あわせて地域貢献にもつながっているという、意識も育ってくれればと思います。

―サービスを展開することで、近隣から感謝されることもあるのでしょうか。

ありますね。最近、自治体から要望が多いです。自治体が持つ悩みの一部を当社のサービスで解決できているんですね。『軒先パーキング』はまさにそうで、ある自治体では観光客が溢れていて、その周辺に住まれている方から「週末になると観光客の車で大迷惑」という声が集まっていたそうです。

なんとかしたくても、新たに駐車場を作る資源や資本がない。そこで、「空いている駐車場があったら貸してください。そうしたら収益も得られるし、迷惑駐車もなくなる」という啓蒙活動をしていたら、不満がなくなったということがありました。お役にたてて、最高にうれしいですね。

福島の喜多方市は、東北一の桜の名所と言われていて、毎年30万人が来られるそうです。しかし、周辺にはコインパーキングもない田舎でした。毎年、桜の季節になると、違法駐車があふれて、苦情があったようです。

そこで昨年から、喜多方市と協定を結び、市報や広報誌や観光協会のHPなどで「空いている駐車場を県外から来られる方に貸しましょう」と募ったところ、現在までに150台ほどの駐車スペースが集まりました。

また、違法駐車が解消できそうというだけではなく、軒先パーキングなら会員の属性が分かるので、どんな方がどこから来たかが調べられるんです。すると利用者に年配の方が多いことが分かりました。

当初は「ネット予約が必要な軒先パーキングは、年配の方は使えないから、利用する人は少ないのでは?」といった声もありました。でも、蓋を開けてみたら50代60代の方が大半でした。年代の方にも利用のハードルは高くないのかなと感じました。

>>次のページ:軒先、今後の展開とは<3ページ目>

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