matsuri technologies・吉田圭汰社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―このコーナーに登場いただいた中では吉田さんが二番目に若い社長(※)です。なぜ不動産・民泊業界で起業しようと思ったのでしょうか。
※注1=1番若いSmart Estat・吉本明弘社長に続いて
2015年から民泊向けの開発やサービスを始めました。当時は私もエンジニアとしてメール代行などの基幹となるシステムを作りました。海外で生まれた民泊ビジネスが、日本に入ってきた頃で、新しいマーケットが生まれているという期待感がありました。
その一方で、法制度はまだ未整備で、この先にどうなっていくのかは、よく分からなかった。そこから2016年12月くらいに、民泊業界の骨子が分かる草案が出てきて、方向性が見えてきました。そこから、代行業務のレベルアップと民泊管理システムの充実化という、やるべきことがはっきりして、民泊市場に絞って事業を大きくしていこうと決まったんですね。
それまでは、AIカンパニーだったんです。チャットのメッセージを分析して、チャットボットを作ったり、それを分類させるために学習させたりがメインの事業でした。その時の技術は、民泊宿泊客からの問い合わせ対応などで活用しています。
だから不動産・民泊業界で起業しようと思ったわけではないのです。開発していた技術が活かせるものがあったことと、新しいマーケットが生まれたことが大きい。そして、不動産・民泊を主戦場にしても良いと考えたのは、住に関わるマーケットであるということもあります。
よく衣食住と言われますが、衣と食の部分では、日本はかなり高いレベルまで来ている。昔は外食って贅沢なものでしたが、今は世の中に安くておいしいものにあふれていますよね。外食する方がコストが安い、ということになってきた。衣類も安くて性能の良いものがたくさんある。こんな風に、世の中はテクノロジーによってどんどん最適化されて行くはずなのに、住環境はまだそこまで達していないと思いました。
なぜ衣食に比べて遅れをとったのか、それはマーケットを見ればわかかります。2025年まで日本国内の世帯数が増えていた。市場が伸びているから効率化する必要がなかっただと思います。ただ、2025年を境目に人が減る、世帯数が減る、2033年には3戸に1戸が空き家になる、2053年には人口が1億人を切るという現実が迫っているので、本気で効率化をしなければならない。今までは、効率化をする必要がないマーケットだったんです。
―効率化というのは、従業員の働き方の効率化ですか、それとも資産としての不動産を効率化させるという意味ですか。
どちらもですね。働き手の数も減るし、売れるものが少なくなってくる。効率化に勝った会社だけが残って、それ以外は滅びていく。残った会社と消える会社で何が違うのかというと、僕が考えるのは従業員一人当たりの生産性です。それを高めていくのに何が必要・不必要なのか、それは不動産会社側の判断ではなく、お客さん側にとって何が本当に必要で不必要なのかというのを理解してサービスを提供していくことだと思っています。
そこでAIやチャットの活用などが重要になっていきます。だけど、簡単ではないと思います。なぜなら、不動産業界ではデータベースが汚れているからです。例えば、仲介店舗では物件確認の電話を管理会社に入れますよね。「3月から入居できますか?外国人の方は入居できますか?」とかやりとりしています。これは「2月10日に退去。20日に清掃、原状回復完了」とか、「同じ物件に外国人の方が入居している」とか、全てデータベースに入れておけばいいですよね。こういう状態にして、不動産業界全体でコストを削って、それもできるだけ人を削らずに作業を削るために、データの取得方法を整備しなければ効率化された業務にはなりません。電話で確認して記録を残さないような、今のやり方をどう直していくかというのは業界をどう健全化していくかということにつながっていくと思います。
民泊ビジネスから、業界の健全化にも貢献していきます。