matsuri technologies・吉田圭汰社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―しかし、自治体や旅行や不動産業とは関係ない一般の方には民泊に対する悪いイメージが広まっているように思います。
現場では、そういった悪感情はもちろん感じています。我々がいろんなツールやサービスを提供しても、事業者の皆さんのリスクがとれない状況があります。そこで、我々がリスクテイカーになりたいと考えています。それもあり、大型の資金調達を行いました。
さらに、大手の上場企業との資本提携も行い、民泊マンスリーファンドを立ち上げる予定です。ファンドで民泊として使えそうな物件の借り上げをしていきます。借り上げならば、物件オーナーや不動産会社にとってはノーリスクで民泊にチャレンジができます。
ファンド以外にも、不動産事業会社をパートナーとして借り上げを加速していきます。当社自体が数億円規模での借り上げを行いながら、パートナー企業及びファンドでも借り上げをしてもらう。そして日本国内で民泊を運営していき、どういったかたちで住宅での宿泊事業を行っていけばいいのか実証していきます。
民泊新法下では、実は建物を民泊ではなくホテルや簡易宿所として運営した方が楽です。収支も読みやすいですし、日数の規制もありませんし、やることも少なくて済みます。ただ、「それって本当に民泊ですか」と感じています。
民泊が民泊たり得るのは、普通のマンションの一部屋や、本当はホテルが建てられないような立地の良いところに物件を作れるというのが、大きなところなんじゃないかなと思っています。そこにこそ、新しいビジネスや観光資源が生まれる可能性がある。それに対して我々はテクノロジーでのソリューションを提供していくとともに、資金も提供して、民泊物件を広く募っていきたいと思っています。
初年度の構想としては、今すでに民泊で収益がとれるエリアから、少し広げたところまでを想定しています。今物件が出ている範囲は、新法が適用されると廃業する民泊もでるので、全体としては数がなくなっていきます。
ただ、当社の予想ではある程度のエリアでは、民泊運用は十分可能だと思っています。なぜなら、我々が市場を見ていた2014年や2015年の民泊のマーケットは、物件の供給が少なくて需要だけが高い時代でした。新法が施行されれば、その状況に戻る可能性があるからです。
また、法律に則った民泊運営を進めるためには、投資の回収期間がこれまでは12カ月ほどだったのを、24カ月や36カ月に伸ばすことで対応できると考えています。最大で3〜4年ぐらいの回収期間のものを借り上げて、ファンドや事業会社と協力しながらやっていきたいと考えています。
民泊新法が施工されたことは、規制が厳しくなったのも事実ですが、ようやく安定して民泊に取り組める環境になったともいえます。これまでは、どんな規制が生まれるのかわからなかったので、そういった不安は解消されました。
リスクをとって、腰を据えて民泊市場にトライしていきたいと思います。