遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。
これまでの商慣習や仕組みごとかわり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。
賃貸仲介業においてサービスを展開するSmartEstate(東京・港)・吉本明弘社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)
SmartEstate・吉本明弘社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
東京・渋谷駅から道玄坂。雑居ビルの5階、インキュベーションオフィス内にSmartEstate・代表吉本明弘氏の職場がある。
「南青山に本来の事務所がありますが、普段はこのオフィスで作業をしていることが多いです」(吉本氏)
吉本氏は現在21歳だ。東海大学在学中の19歳でSmartEstateを立ち上げ、ビジネスに専念するため退学した。
中学生の時に不動産投資に興味を持った吉本氏は、独学で不動産ビジネスについて学ぶ。さらに高校入学後にITとであったことから、ITによる不動産ビジネスの展開を考えるようになった。
起業後に最初に手がけた『SmartEstate』は、物件オーナーと借主が直接取引できるプラットフォームだ。仲介会社を挟まずに取引することで、借主は仲介手数料や礼金を支払わずに物件を借りることができる。貸主も仲介会社への広告料などが必要なくなるメリットがある。賃貸の入居初期費用は、家賃の4~5カ月分が相場だと言われているが、同サービスでは利用料を含めても3.5カ月分ほどで済む。2017年にリリースして、現在では賃貸物件500室とオーナー300人と提携している。
2017年に満を持してスタートした事業だったが、1年経って様々な問題に直面した。
「借りたい人の集客はできましたが、500室では希望の条件に合う物件を見つけることが難しいことがありました。また、築年数が古く入居募集に困っている物件が多く、マッチングに苦労しました」(吉本氏)
好条件の物件は管理会社が囲っているケースが多いため、良質な物件の収集に苦労したという。
「CtoCのビジネスはスケールするまでが厳しい」と感じ、宅建士をサポートメンバーに加え、自社での賃貸仲介を始めた。礼金をもらわず初期費用を抑えることで、借主からの引き合いも多いという。しかし、仲介をメインとしたビジネスモデルでは、営業パーソンを集めなければ大量の案件に対応できず、なかなか企業を成長させることはできない。現状に限界を感じた吉本氏は、新たなサービスを構想する。
吉本氏は熊本県出身、父親は工学技術の研究者、母親は介護関係という不動産業界とは無関係の家庭で育ち、高校卒業後、進学を機に上京した。前述の通り、不動産に興味を持ったのは中学生の時だったという。「昔から、個人で稼ぎたいと思っていました。どうやって稼げるかと考えたときに、大きな額が動く不動産だな、と感じました」と語る。中学生時代は住宅ローンに関して勉強をはじめ、高校ではプログラミングは学び、在学中にもいくつかのシステム開発の案件を請け負っていたという。