セイルボート・西野量社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
―不動産テックの今後、またその影響をどう予想しますか。
これは不動産テックと呼ばれるもの全体にいえることですが、業者間の情報の非対称性があるために、日本が欧米と比べて不動産テックが浸透していかないのだと思います。
よく消費者と不動産業者の間にある非対称性を問題視する意見を聞きます。でも、CとBの非対称性の解消はかなりすすんだと思っています。現在ではコンシューマ側が主導権を握ってコントロールしてはいないですか。部屋探しの時、コンシューマは不動産会社に問い合わせる前にあらゆる手段で物件について調べています。例えばおとり広告なども、電話やメールの時点でその物件がないことが分かれば、それで終了です。
しかし、業者間においてはまだまだ情報の非対称性が強いと感じます。アメリカではMLS(Multiple Listing Service※)があり、これが不動産テックを支える黒子を担っています。不動産流通の透明性を担保したシステムがあり、統一された契約書がある。そういった土台が構築されているため、生産性の向上につながり、不動産テックを活用したサービスで付加価値が追求できるのではないでしょうか。
※注=不動産協会で運用される不動産情報システムのこと。日本のREINSに似た仕組みだが、物件登記や公図も登録されており、REINSよりも情報量は豊富とされる。
『キマRoom!』も、日本版のMLSのような役割を果たしていきたいと考えています。不動産業界の効率化や、契約書を統一することで無駄をなくし、仲介会社の顧客サービスを向上させていきたいと考えています。情報流通が透明になった業界では、サービスのレベルが各社の違いになる。仲介会社が不動産エージェントとして切磋琢磨するでしょう。
―セイルボートではどんな課題を解決していきますか。
今後は、不動産賃貸業務に関わるあらゆる作業のペーパーレス化を目的に展開していく予定です。あらゆる作業が一式そのまま電子化していきます。
業界の電子化の第一波は今年中に来るでしょう。
大手不動産会社では、来期の予算の中に電子化のための費用が計上されていると聞いています。来年の1~3月の繁忙期に向けての投資です。
各社、どのプロダクトを選んで電子化を進めるかで大きく変わっていくと思います。ここ数カ月の間に、業界の変化の兆しがあると思います。