トーラス木村幹夫社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。
これまでの商慣習や仕組みごとかわり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。
不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。
3月9日の記事に続き、トーラス・木村社長に同社のサービスが不動産業界にどのような変化を与えるのかを聞いた。リビンマガジンBiz編集部)
登記情報を取得する「だけ」のサービスでは価値がない
トーラス(東京・千代田区)の木村幹夫社長は、前回記事「トーラス 木村代表「何もない」は不動産テックにとってのチャンス」で、「不動産業界はIT化や、情報の公開が遅れている分、テクノロジーによる変革の余地がある」と語った。では、同社が提供する登記簿謄本データを活用したマーケティングサービス『不動産レーダー』は、不動産テックによってどうかわって行くのだろうか。
木村氏は「不動産レーダーは登記簿の取得代行と登記簿データを活用したマーケティングコンサルティングが主なサービスです。しかし、近い将来、登記の取得代行サービスは必要なくなる可能性があるでしょう」という。
「不動産テックによって、膨大な不動産データが記録され、活用されるようになるはずです。いずれ不動産会社と消費者の間にある情報の非対称性がなくなると言われています。これまで不動作会社だけが知っていた、価格や建物の情報が誰にでも分かるようになる。そうなれば、登記簿の情報を取得するだけのサービスに価値はありません」(木村氏)
(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
不動産レーダーで、欲しい登記情報が手に入る時代に
では、『不動産レーダー』は今後どのように進化していくのだろうか。
「不動産情報の高度な分析によるマーケティングや経営戦略のコンサルティングです。実は、その進化の方向性がわかる機能の一部はすでに実装しはじめています」
この機能を使えば不動産会社や金融機関にとって役立つ情報を提供できる。
例えば、登記情報をもとに不動産に抵当権が設定された時期を検索するといった使い方がだ。これにより、住宅ローン金利が高かった時期に、ローンを組んだ不動産の所有者が分かる。金融機関を中心に、住宅ローン借り換えの提案リスト作成に役立てるというわけだ。
また、土地活用業者向けには、地主の情報の収集をすることが可能で見込み客を効率よく集めることができる。
不動産情報がオープンになっても、その分析や使い方で違いがでる。こうした知見が同社にとって大きな武器になるというのだ。
木村氏は、これからの『不動産レーダー』のあり方を、ネット検索エンジンのGoogleに例える。
「ネット検索エンジンがなかった時代、インターネットは誰にでもアクセスできる環境でありながら、調べ方をしらない人は、自分の見たいページがどこにあるのかは分かりませんでした。Googleはそれまでバラバラに存在していたウェブページをまとめて、入力されたキーワードによって、重要だと思われるページを順番に紹介するサービスを始めました。これにより、誰もが見たいページにアクセスできるようになりました。不動産情報においてその役割を担うのが当社の狙いです」(木村氏)。
大量に情報があったとしても、それをどのように活用できるかどうかは、検索方法や探し方によって異なってくる。
登記情報も同様だ。登記簿を一つひとつ見ていくことはできても、本当に自分が欲しい情報を見つけるには、非常に時間がかかる。登記を取得し、それを読み、価値があるかないかを判断しなければならないからだ。『不動産レーダー』は、人間が読み切ることができない大量の情報をまとめ、分析する人工知能が備わっている。
「『あなたにとって価値がある登記ですよ』ということが分かると、世の中が変わると思う」(木村氏)。
同社では、不動産登記を使った分析を10年以上行っている。
その中で、あらゆる業界でのニーズに答えられる可能性を感じているという。