賃貸住宅建築専業メーカー比較 2021年度
賃貸住宅建築専業メーカー比較 2021年度
賃貸住宅の建築会社のうち、有名な「大東建託」「レオパレス21」「東建コーポレーション」の3社について、2021年3~4月期の業績を比較します。売上、営業利益、純利益、社員数、物件管理戸数、時価総額の6つのデータで、コロナ禍に揺れる賃貸住宅業界の今を紐解きます。あわせて、前年期の各データとの比較も掲載しました。(リビンマガジンBiz編集部)
集計方法
・2021年3月期(大東建託、レオパレス21)および2021年4月期(東建コーポレーション)の有価証券報告書より集計
・連結決算の数値を採用
・2022年5月2日時点の時価総額を集計
・物件管理戸数の数値は、週刊全国賃貸住宅新聞の「2021年管理戸数ランキング」より集計
画像=写真AC
売上ランキング:3社とも減 コロナの影響が明白
1位は大東建託で、売上高は1兆4,889億1,500万円でした。昨年は1兆5,862億9,300万円でしたので、前年比94%となりました。2位レオパレス21も売上高4,089億5,900万円で前年比94%、3位東建コーポレーションが3,098億900万円で前年比96%と、賃貸住宅メーカー大手3社はいずれも売上高マイナスとなっています。
コロナ禍で快適な住宅を求める需要が高まり、戸建住宅やマンション建築などでは景気の良い話も聞かれますが、賃貸住宅となるとまた事情が異なるようです。人口減少にともなう賃貸住宅の供給過剰のほかに、コロナ禍により地主が新たな賃貸住宅建設を見合わせたことや、大学生の地元志向により下宿を借りないなどの影響があったと考えられます。
こうした事態を受けて、大東建託の有価証券報告書においても、賃貸住宅事業のいっそうの強化を図りつつ、生活総合支援企業として、ウィズコロナの新しい社会に対応することを目標に掲げています。
参考サイト
「賃貸住宅建築専業メーカー比較 2021」
利益ランキング:大東建託は大幅ダウン 他2社は回復
1位の大東建託は、前年度の決算では増益となったものの、今期の決算では営業利益867億3,800万円(前年比68%)、純利益623億6,700万円(前年比69%)と、いずれも3割以上の大幅減益となっています。
他方、昨年は大幅な減益となった2位の東建コーポレーションは、営業利益155億6,200万円で前年比率は121%、純利益100億8000万円で前年比117%と回復しました。レオパレス21は相変わらず深刻な赤字状態が続いていますが、営業損失は291億8,200万円で前年よりはマイナス幅を縮小させています。純損失は232億500万円で、前年の802億2,400万円よりはだいぶ縮小しました。企業努力の結果が見て取れます。
レオパレス21は「家具・家電標準装備の賃貸住宅」を提供しており、最近ではウクライナ避難民の方々に住宅提供を実施するなど、コロナ前に世間を騒がせた施工不良問題からの信頼回復に努めています。
社員数ランキング:3社とも減 コロナ禍を楽観視せず
社員数ランキングでは、1位大東建託(1万7,422人)・2位東建コーポレーション(5,283人)・3位レオパレス21(5,082人)とも社員数を減らしました。特にレオパレス21は、昨年は7,043人いた社員数を2,000人近く削減し、3位に後退しました。効率経営で生き残りに全力をかけています。
不動産業界などでは、コロナ禍で業績に影響は出ていても、強気の姿勢で社員を増やしている会社もありますが、賃貸住宅メーカーはもともと市場規模が縮小傾向だったこともあってか、各社とも慎重な姿勢です。
時価総額ランキング:東建コーポレーションのみダウン
時価総額ランキングは1位大東建託が8,153億1,200万円で昨年比100%でした。コロナ禍で業績や社員数に影響は出ていますが、投資家からは経営状況や方針に一定の支持や理解を得られているようです。
また、3位のレオパレス21は昨年の497億3,800万円から大きくリバウンド、前年比129%の642億3,100万円となりました。引き続き厳しい経営状態ですが、信頼回復への努力が一定程度評価されているようです。
2位の東建コーポレーションのみ、昨年の1,379億5,300万円から1,149億1,600万円と、前年比83%となりました。東建コーポレーションは、昨年の調査では、投資家の期待を集めてこの3社のなかで最も時価総額を増やしましたが、今年はその反動か、じりじりと株価を下げています。
東建コーポレーションは賃貸経営をしている・目指す人のために賃貸経営の最新動向をお届けする「賃貸経営ニュース」や、税理士・弁護士をはじめとする専門家の土地活用コラムを公式サイトに掲載するなど、地主目線に立ったマーケティングを行っています。
物件管理戸数ランキング:レオパレス21がマイナスに
2021年の物件管理戸数ランキングは、1位大東建託が117万264戸となり、前年より4万4,046戸増やしました。3位の東建コーポレーションは去年より8,594戸増の25万5,416戸でした。物件管理戸数が増加する2社に対し、レオパレス21は昨年より-2,125戸となる57万3673戸で、厳しい現状が物件管理戸数のデータにもはっきり表れています。
日本の人口が減り、コロナにより海外からの移住も減少する中で、賃貸住宅業界の3社はそれぞれに生き残り戦略を打ち出して対応しようとしています。今後はますます、顧客のニーズに即した柔軟な経営手法と、時代の流れをつかんだ新しいアイデアが求められるようになるでしょう。
会社名 | 2021年4月期時点 売上(百万円) |
2021年4月期時点 営業利益 (百万円) |
2021年4月期時点 社員数 |
2022.5.2時点 時価総額 (百万円) |
物件管理戸数 2021年8月 |
大東建託 | 1,488,915 | 86,738 | 17,422 | 815,312 | 1,174,264 |
東建コーポレーション | 309,809 | 15,562 | 5,283 | 114,916 | 573,673 |
レオパレス21 | 408,959 | -29,182 | 5,082 | 64,231 | 255,416 |