賃貸住宅建築専業メーカー比較 2020
賃貸住宅建築メーカー3社「大東建託」「東建コーポレーション」「レオパレス21」を、売上、営業利益、純利益、社員数、物件管理戸数、時価総額の6つのポイントで比較しました。何かと比べられる大手3社を、去年からの変動も合わせて考察し、賃貸住宅業界の今を掘り下げます。(リビンマガジンBiz編集部)
集計方法
・2019年3月期(大東建託、レオパレス21)および2019年4月期(東建コーポレーション)の有価証券報告書より集計
・連結決算の数値を採用
・2019年5月12日時点の時価総額を集計
・物件管理戸数の数値は、週刊全国賃貸住宅新聞の「2019年管理戸数ランキング995社」より集計
売上・利益ランキング:1位大東建託は堅調に推移 他2社は苦戦
1位は大東建託で、売上高は1兆5,911億7,800万円となりました。大東建託は独自開発の「賃貸経営受託システム」を武器に、地主に土地活用を提案する大手建設会社です。2位のレオパレス21に約3倍の差をつけ、売上も昨年比102%と微増ながらも確実に伸ばしています。
他方、2位のレオパレス21は前年比95%の微減、3位の東建コーポ―レーションは100%の横ばいと、売上だけを見ればおおむね前年比を維持しているように見えます。しかし、営業利益と純利益についてみると、様相が変わっています。
大東建託の営業利益は前年比101%の1,270億4,700万円、純利益は前年比102%の903億5,900万円と、安定的に推移していることが分かります。
しかし、東建コーポレーションは営業利益で前年比79%の156億600万円、純利益では86%の108億3,200万円と苦戦しています。
減益の理由として、 (1)借家市場全体が縮小傾向にあること、(2)金融機関の賃貸建物に対する融資の厳格化によりローンが組みにくくなっていること、などが同社の有価証券報告書にて指摘されています。今後はコロナウィルスの影響より、さらに厳しさが増すと考えられます。
レオパレス21の落ち込み方はより顕著で、営業利益は前年比32%の73億9,000万円、純利益は前年比-464%となり、687億2,000円の純損失を出す結果となりました。前述の社会情勢に加え、マスコミで取り沙汰された施工不良問題が影響しています。
社員数・物件管理戸数ランキングも大東建託と他社の明暗分かれる
社員数や物件管理戸数ランキングからも、大東建託と他社の明暗の差は顕著です。大東建託の社員数は1万7,646人で、昨年からは売上・利益率の増加率とほぼ同じ103%の微増となり、安定した成長を続けています。他方、レオパレス21と東建コーポレーションはともに99%の微減となりました。
物件管理戸数においては、大東建託は108万6,927戸となり、去年より5万戸以上増加しています。他方、東建コーポレーションの管理戸数は去年と比べ7,604戸増の23万3,620戸にとどまりました。不祥事があったレオパレス21はさらに増加幅が小さく、昨年より4,126戸増加の57万4,798戸となっています。
時価総額ランキングは意外な結果 コロナの影響を強く受けた会社は
時価総額は、株価に発行済株式数を掛けたもので、企業の市場価値を示しています。
時価総額ランキング1位の大東建託はコロナ禍の影響をもろに受け、前年の4月時点から3割以上減の7,922億2,400万となりました。
売上・利益・社員数・物件管理戸数すべてにおいて順調だった大東建託の株価が急落したことは、新型肺炎の社会的な打撃の大きさを物語っています。しかし、コロナ以前は経営が安定していたことから、状況が落ち着き次第、時価総額は持ち直すことでしょう。
他方、東建コーポレーションの時価総額は前年4月とほぼ変わらない992億8,900万円、レオパレス21は前年4月から2割ほどアップの631億8,000万円でした。
東建コーポレーションは2019年1月ごろから株価が低迷しており、コロナの影響で株価は一時急落したものの、すぐに元の水準まで回復しています。同社は、コロナ前の昨年秋には賃貸住宅市場が冬の時代に入ることを見据え、都市部の支店の再編に踏み切っています。厳しい現実を踏まえつつも、先を見据えた事業展開を行っており、その姿勢が評価されて、株価下落に歯止めがかかったと考えられます。
レオパレス21は、施工不良問題が発覚して株価が急落した後は、不安定な上下動を繰り返しています。そのため、コロナショックに際しても、他社に比べて極端な急落下はみられませんでした。しかし、経営状態が厳しいことには変わりなく、今後はコロナの影響で、さらに難しいかじ取りを迫られそうです。