国内の不動産テック企業37社(※)を対象として、ベンチャーキャピタルからの融資や、第三者割当増資による資金調達の額をランキングしました。不動産テックとは、不動産業にITテクノロジーを組み合わせた新たな不動産サービスです。併せて、海外の不動産テック企業が2018年に行った資金調達ランキングトップ5も紹介します。(リビンマガジンBiz)
※注1=編集部基準
集計方法
・企業公式サイト、プレスリリース、新聞、調査会社などの報告を元に作成
・公開されている調達額の合計をランキング化
・日本の国内企業限定
・2019年6月8日時点の集計
資金調達額20億円突破の不動産テック企業は2社!
1位はLiquidで、資金調達額は36億9,200万円でした。Liquidは、金融機関等における本人確認手続をオンラインで完結できる生体認証システムの会社です。グループ傘下のMY CITYが、オフィス向け働き方支援IoTサービス「My Place」を提供しています。
My Placeはビル管理システムや各種センサーを使い、利用者の位置や行動、環境などといった情報を収集し、働き方の見直しや生産性の向上に役立てることができるサービスです。このサービスにはLiquid社の画像認識技術が生かされており、同社は2018年7月に農林中央金庫、東京海上日動火災保険といった企業から第三者割当増資等により33億円の資金調達を行っています。それ以前は、2016年12月にKDDIから約3億円を調達しています。国をあげて働き方改革が叫ばれているなか、新しいオフィスのあり方を見据える同社への期待が高いことが伺えます。
2位はakippaで、資金調達額は総額24億円となりました。駐車場予約アプリ「akippa」は、全国の月極・個人等の駐車場を、空いている際に一時的に貸し借りできるサービスです。駐車場側は空きスペースを有効活用でき、利用者側は安く駐車場を予約できます。同アプリは予約駐車場サービス・駐車場シェアサービスで業界1位を獲得しています。
akippaは2016年1月にはグロービス・キャピタル・パートナーズ他4社から6億円、2018年5月には住友商事など7社から合計8億1,000万円を第三者割当増資により調達するなど、活発に資金を集めています。2018年5月に実施した不動産テック企業の資金調達額ランキングでは、akippa社が1位でした。その後、新しい資金調達の発表はありませんでしたが、今も上位に入っています。
参考サイト
10億円以上を集めた不動産テック企業は9社で、3位以下はこのようになっています。
3位 百戦錬磨 16億円
4位 フォトシンス 14億5,000万円
5位 セーフィー 13億5,000万円
6位 スペースマーケット 13億5,000万円
7位 ナーブ 13億3,000万円
8位 リノべる 13億円
9位 ルームクリップ 11億円
2018年に行なわれた海外不動産テック企業資金調達ランキングTOP5
続いて、2018年に海外の不動産テック企業が行った資金調達額TOP5を紹介します。
2018年海外不動産テック企業資金調達ランキングTOP5
順位 |
企業名 |
調達額(ドル) |
円換算(2019年6月9日現在) |
提供サービス |
1 |
WeWork |
40億 |
4327億 |
コワーキングスペース運営 |
2 |
Katerra |
8億6500万 |
938億 |
建設スタートアップ |
3 |
Opendoor |
7億2500万 |
784億 |
戸建住宅購入・販売プラットフォーム |
4 |
Compass |
4億 |
433億 |
売買プラットフォーム |
5 |
Sonder |
8500万 |
92億 |
アパート・ホテルスタートアップ |
1位は世界中でコワーキングスペースを運営しているWeWorkで、40億ドル(約4327億円)でした。2017年の調査でも、ソフトバンクから44億ドルの投資を受けて1位となりましたが、2018年においても引き続きソフトバンクから巨額の資金を調達しています。
2位は、建築スタートアップサービスのKaterraで、8億6500万ドル(約938億円)です。こちらもソフトバンクから1月に資金を調達しています。Katerraは急成長した企業のため、問題も発生しており、アリゾナの工場では短期間の操業停止などのトラブルにも直面しています。しかしながら、CEOであるMichael Marks氏は、「あらゆる点で素晴らしい成果を上げている」と強調しています。
3位は、戸建住宅の購入・販売プラットフォームを運営するOpendoorで、7億2500万ドル(784億)となりました。サンフランシスコを拠点とする新興企業ですが、こちらもやはりソフトバンクからの投資となっています。
1~3位までの巨額資金調達は、いずれもソフトバンクが資金源となっていることがわかりました。アメリカは土地が広大な分、全土の情報を一瞬でつなぐことができるITテクノロジーへのニーズが高く、またシリコンバレーを中心に高い技術をもつ人材が存在するため、巨額の投資が行われていることが窺えます。日本の企業が深くかかわっていることもあり、今後の投資活動にも注目が集まります。