上場している不動産企業106社(※)を対象とし、負債依存度が高い企業をランキング形式でご紹介します。負債依存度の指標として、純資産に対する有利子負債の割合=デッド・エクイティ・レシオを集計しました。D/Eレシオの倍率が高いほど、有利子負債に依存した経営であることを表します。
※注=編集部基準
集計方法
・2017年12月期から2018年11月期までに公表された企業の有価証券報告書より集計
・D/Eレシオは、有利子負債を自己資本で割って算出
・有利子負債は、貸借対照表の負債の部に記載されている科目のうち、「短期借入金」「長期借入金」「社債」「コマーシャルペーパー」「リース債務」を抜き出して合算
・自己資本は、貸借対照表の純資産の部のうち「株主資本」と「その他の包括利益累計額合計(または評価・換算差額等)」を合算
・連結決算の企業は連結貸借対照表を参照
負債依存度が7倍を超える不動産会社は3社
1位は原弘産で、D/Eレシオは20.36倍となりました。原弘産は主に下関市、山口市で不動産の分譲や賃貸管理事業を手掛けています。
2009年ごろから業績が大きく悪化し、一時は破産も検討された会社ですが、事業継続のための必死の努力が実を結び、2018年10月期の決算で8期ぶりに黒字化を達成しました。有利子負債も、一時は返済が厳しい状況に陥りましたが、金利を優遇して融資をしてくれる会社が見つかり、債権譲渡や借り換えにより当面の危機を脱することができました。
今後は東証二部上場維持を目指し、さらなる努力を続けています。
2位はエスポアで、D/Eレシオは7.25倍となりました。エスポアは不動産に関する企画や開発・マネジメント、「エスポア」ブランドのマンションの分譲などを行っています。
エスポアは、負債・純資産合計に占める有利子負債の割合が80.7%と高い状態です。また、資金調達先の金融機関等からは、一部の借入金に財務制限条項が付されています。今後は、テナントリーシングの強化や建売販売の強化により、売上高の拡大やコストダウンを図り、財務体質の健全化を目指しています。
3位はユニゾホールディングスで、D/Eレシオは7.25倍です。ユニゾホールディングスは、東京都心やアメリカのニューヨーク、ワシントンD.C.にて、オフィスビルの保有・賃貸・管理、またビジネスホテルの運営事業を行っています。
ユニゾホールディングスの足下の業績は好調で、売上高は前年比32.5%増の524億6200万円となるなど、成長・拡大路線にあります。他方、有利子負債の残高は902億9700万円増加し、総資産に対する有利子負債への依存度は84.1%と高くなっています。今後はより安定した企業運営を目指しつつ、グローバルな事業拡大をさらに加速させる予定です。
1位、2位の企業の経営が厳しくなった要因に、2008年9月のリーマンショックが挙げられていました。リーマンショックが不動産業界に与えた影響の大きさを物語るとともに、10年をかけて財政を立て直しつつある姿も見てとれます。3位のユニゾホールディングスは事業拡大のための積極的な資金調達が原因のようです。
負債依存度が4倍以上は9社 上場不動産企業のD/Eレシオの平均は?
続いて、D/Eレシオの値が4倍以上の会社をご紹介します。
4位 ビジネス・ワンホールディングス 6.27倍
5位 プロパスト 5.55倍
6位 AMBITION 5.52倍
7位 APAMAN 4.45倍
8位 ラ・アトレ 4.39倍
9位 アルデプロ 4.36倍
調査対象とした上場不動産企業106社の平均は1.81倍でした。一般的に、D/Eレシオは1倍以下だと健全経営で、1倍より多いと借金が多いとされています。しかし、不動産業界はD/Eレシオの倍率が高いと言われており、今回の調査でもそれが裏付けられました。
総力を上げて倒産の危機を切り抜けた企業がある一方で、有利子負債が多くとも成長・拡大路線にある企業もあり、負債を背負いながらも明るさが感じられるランキングともなりました。今後は、去年末からの世界や日本の情勢の変化が顕在化しそうなため、経営陣のさらなる手腕が問われそうです。