以前公開した「不動産業界 売上成長率ランキング」につづき、住宅建設企業30社(※)を対象に、17年6月期までに報告されている各企業の決算書・有価証券報告書に記載されている売上と、2007年時の売上を比較し、10年の売上成長率を算出しました。(リビンマガジンBiz編集部)
※注:編集部基準
■厳しい環境の住宅建設業界
今回調査した30社の平均10年売上成長率は+60%でした。業界全体が成長していることが分かります。しかし、不動産業界が+170%だったことに比べると、大きな成長ではありません。不動産業界が活況である一方で、どうして住宅建設業界が伸び悩むのでしょうか。
それは、住宅業界を取り巻く環境が変化していることが要因です。
住宅着工数の推移
(画像=リビンマガジンBiz編集部)
出展:国土交通省「住宅着工統計(2017年)」
2008年には109万戸に達していた住宅着工数は、翌年リーマン・ショックの影響で、78万戸まで落ち込みます。やがて緩やかに持ち直し、消費税増税前の2013年には98万戸と100万戸近い供給がありました。直近2016年の着工数も96万戸と悪い数字ではありません。しかし、人口減少が本格化している日本では、住宅市場は縮小傾向にあります。
■10年で大きく成長した企業とマイナス成長した企業の差違いは?
1位の桧家ホールディングスは10年前と現在では、売上を構成する事業に変化がありました。2007年12月期は、木造注文住宅建築事業が売上全体の97%を占めていました。2016年12月期では、注文住宅事業が57%、不動産事業が20%、断熱材事業が15%と、住宅供給以外の事業も売上に貢献しています。縮小する住宅建設とは異なる分野でも売上を積み上げたことが大きな成長に繋がりました。
28位の注文住宅大手の日本ハウスホールディングスは-30%とマイナス成長しています。2007年10月期は住宅事業が全体の88%、2016年10月期も同事業が84%と高い割合です。縮小する市場の影響を正面から受けています。
このように、変化する市場に臨機応変に対応し、多角的にビジネスチャンスを作り出した企業に大きな成長がありました。一方、住宅供給に関連する事業1本の企業は厳しい状況にあります。
業界最大手の大和ハウス工業と積水ハウスを比べても、多角的なビジネスや新たな商機を見つけた大和ハウス工業が大きく成長率を伸ばしたことがわかります。
2007年の売上では、大和ハウス工業と積水ハウスの差は223億円程度でした。しかし、2017年では約1兆5,000億円もの差が生まれています。
大和ハウスの2007年の売上構成は、住宅事業が57%、商業建築事業が28%となっています。積水ハウスも、工業化住宅請負事業が44%、不動産販売事業19%、不動産賃貸事業が27%でした。2007年の売上では、両社とも住宅供給事業が売上の大半を占めています。
2017年の売上では、大和ハウス工業は戸建事業11%、賃貸住宅事業29%と、住宅供給事業の割合が減少する一方で、商業施設事業17%、事業施設事業24%と、商業施設や物流倉庫の開発事業が伸長しています。積水ハウスも、リフォーム事業7%、国際事業9%と、住宅供給以外の事業でも売上を積み上げていますが、メインとなるのは戸建事業20%、賃貸住宅事業22%などの住宅供給に関連する事業です。
住宅建設業界でありながらも、市場の動向や行く末を読み、需要が高い事業や新たなビジネスに進出する企業が今後も大きく成長すると考えられます。
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