住宅関連の建設業を行っている58社(※)を対象に売上をランキング化しました。また、住宅建設の市場は今どうなっているのか、専門家に聞きました。(リビンマガジンBiz編集部)
※注1(編集部基準)
最終更新:2017年11月20日
住宅建設業はここ数年、全体的に好調に推移し、ランキング掲載の58社平均でも1.08倍に伸びています。減収になっている企業も、わずかな減少となっている程度で、大きく下がった企業はありませんでした。また、1位の大和ハウス工業や、2位の積水ハウスなどは、数期連続で最高売上を更新し続けています。
賃貸住宅の建築が最高増益につながる
「特に、賃貸住宅の建設需要により、住宅建設の中でもアパート専業メーカーや賃貸建設部門がある企業の売上の伸びが顕著だった」と語るのは、元住宅メーカー勤務で現在はFPオフィス ノーサイド代表の橋本秋人氏です。
2015年の改正により、相続時にかかる税金の基礎控除の引き下げられたことにより、相続税対策としての賃貸住宅建設には多くの需要がありました。加えて、2016年のマイナス金利をはじめとした超低金利政策が後押しをした形となっています。
1位の大和ハウス工業も、戸建事業の売上は横ばいながらも賃貸住宅建設事業が続伸しています。また、3位の大東建託も賃貸住宅の建築請負が好調で、木造建築事業の売上構成比の向上などが見られました。7位のレオパレス21も同様に、賃貸住宅の建築が好調な数字を見せています。
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コア事業以外の好調も売上伸長のカギ
橋本氏は、住宅メーカーが展開するコア事業以外の事業が好調だったことも売上伸長に繋がっているといいます。
5位の住友林業による海外事業は、海外進出している大手住宅メーカー各社の中でも一番の売上です。オーストラリアやアメリカの住宅メーカーを子会社化し、好調な戸建事業を展開しています。大和ハウス工業や2位の積水ハウスも海外進出に力を入れていく姿勢を見せています。積水ハウスは、2年後に売上全体の2割を海外事業にする、という目標を掲げています。
また、大和ハウス工業は、物流施設や食品工場といった非住宅建設による事業の売上が、全体の40%ほどになっており、すでに戸建建築建設の11%を大きく上回っています。
大東建託やレオパレス21も建築した建物に太陽光パネルを設置するなどの施策により、売上を伸ばしています。
このように、各社の建築事業以外が好調だったことも、今回の結果に大きく寄与しています。
賃貸住宅建築による売上増収は長くは続かない?
好調を支えた賃貸住宅建築の売上は来期になると落ち込むだろうと、橋本氏は予測します。それは、顕著になってきたオーナーとのサブリース契約の問題や、アパートローンの融資引き締め、人口減少のなかで「入居者がつかないのではないか」というオーナーの不安といった要素があるからです。また、入居者が減ることでの空室率上昇により、サブリース契約している企業にも負担が大きくなっていくことが予想されます。
現に、大東建託は、今年は昨年と比べて建築受注が4.7%落ちています。レオパレス21も昨年比で受注が14%以上も下がっています。
また、新築住宅の供給数が年々減少していることからも、戸建事業も今後縮小傾向にあると考えられます。
そういった中で、海外事業といった新しい事業に活路を見出している大手企業以外はどうなるのでしょうか。
橋本氏は、「今後は、各社リフォーム事業に注力していく」と予想しています。
今後は新築住宅事業にこだわらず、既存の建築物を活用したビジネスモデルを確立することが、住宅建設企業の課題になっていくでしょう。