SD建築企画研究所・清水修司代表(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
不動産ビジネスの世界には、他には変えられぬお宝がある。
業界の片隅に眠る、後世に伝えたいお宝にスポットライトをあてる。(リビンマガジンBiz編集部)
秘密の古文書を発掘する研究者か、はたまた膨大な文学の歴史と格闘する文士か。
(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
憶測は拡がるが、さにあらず。
巨大な書類の山に埋もれるのは、SD建築企画研究所(東京)の清水修司代表、業界でも名の知れた建築家だ!
清水代表はマンション建築黎明期から多数のマンション設計に携わってきた。マンション建築の世界では生き字引のような存在だ。
自身が大手デベロッパーからの依頼を受け、斬新な設計でマンションの流行を作り出してきた。例えば、エントランスを豪華にするトレンドも、清水代表のアイデアから始まったという。
そのアイデアの源泉となったのが、マンション分譲時に作られる、このカタログたちだ。
スライド式のメタルラックには、マンションカタログが隙間なく並んでいる(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
ラックとラックの間から見える壁側の本棚にもカタログの山(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
40年前から、自身の研究・調査のためにマンションカタログの収集を開始。積もり積もった、その数は何と5万棟分、150万戸分にものぼる。
「眺めるだけでマンション建築の栄枯盛衰がわかるよ」と、みせてもらった珍本の中には絢爛豪華なバブル期のカタログだ。いかにも高価そうな箱入りのものや、レコードジャケット風の遊び心があふれるもの、中には、開くと音楽が流れるカタログまである。
「やっぱりバブル期のものは勢いがあるよ」と清水代表。
「カタログだけではなくて、建築もそうだね。今は高級物件なら木目調だよね。バブルのころは、やたらめったら高価なタイルを貼り付けている。今は金持ちほど地味だから」
カタログは地域によって整理されている。仕分けも一苦労だ(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
収集だけでなく、維持、管理にも費用をかけている。
保管のためだけにマンションを1室用意してあり、カタログの大部分は、そこで大事に保管している。
話を聞きつけ、「是非全て買い取らせてほしい」という企業もあったそうだが、三井不動産、住友不動産、三菱地所、大京などなど、デベロッパーごとに分類されたカタログ群は、国会図書館にもない第一級の資料だ。「手放すと二度と戻ってこない」と周囲に説得された。活用については現在検討中である。
(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
清水 修司(しみず しゅうじ)
昭和44年(1969年)芝浦工業大学建築学科卒業後、入江三宅設計事務所入社。
アークヒルズ、ラフォーレ原宿、リクルート本社ビル等のプロジェクトに参画。
昭和53年(1978年)SD建築企画研究所設立
平成16年(2004年)国土交通大臣表彰受彰
平成17年(2005年)黄綬褒章受章