司法書士・家族信託専門士の尾崎信夫です。今回も「認知症になっても相続対策を止めない家族信託」の家族信託契約書についてです。
(山田家相続関係事例)
第7条からの続きです。
7 追加信託
委託者(または受益者もしくは受益者代理人)は、金銭や不動産を追加で信託できます。これを「追加信託」と言います。
本来追加信託も通常の信託契約と同様な手続を要するのが本来ですが、金銭を追加するたびに契約書を交わすのは不便なため、信託契約書に「追加信託」の事項を入れておきます。ただし、不動産については登記手続きが必要なため、信託契約書と同様な手続が必要になります。
また、この「追加信託」の条項が入って入っていないと、わずかな金銭を入れるだけでも新たに「信託契約」をしなければならないため、必ずこの条項は入れておきます。
第7条(追加信託)
委託者または受益者もしくは受益者代理人は、次の方法によって信託財産として金銭及び不動産を追加することができる。
(1)金銭を追加信託する場合は、信託口口座への振込により行う。
(2)不動産を追加信託する場合は、本信託契約と同様の手続により行う。
8 受益権の内容
受益者が、信託財産から得る経済的利益の内容です。
通常収益不動産なら賃料や売却益となりますが、例えば近い将来自宅を大修繕したいため家族信託を結ぶ場合などは賃料のような安定的な収益がないため、売却換金されるまでは受益権としては発生しないことになります。
第8条(受益権の内容)
受益者は、信託不動産の賃料、売却代金などの経済的利益を受けることができる。
9 受益権の処分の制限
受益権は、経済的利益を受ける権利のため、受益者はこの権利を売却したり、贈与したり、質権を設定したりすることは可能です。しかし、家族信託の受益権は、委託者(事例では山田父朗)の想いを実現するためにあります。そのため第二受益者(子太郎)、第三受益者(孫太郎)が勝手に受益権を第三者に売ったり、担保にしたりすることは父朗の想いを踏みにじることになります。そのため「受益権」の制限が必要になるのです。
第9条(受益権の処分の制限)
受益者は、受託者の同意なく、その受益権を譲渡、放棄、担保提供などをしてはならない。
10条以降は、次回書きます。