司法書士・家族信託専門士の尾崎信夫です。前回に続き「家族信託(民事信託)」についてです。
家族信託は、財産をお持ちの方がその財産の一部(あるいは全部)を信頼できる家族・親族(例えば長男や妻)に託し、その財産(信託財産と言います)から得る利益(家賃や売却代金など)を自分が得るスキームです。
家族信託スキーム図
では、なぜ長男などに託すのか。いくら信頼する家族とはいえ何の理由もなく託すことはありません。託すには託す理由があるのです。
託す理由は大きくふたつ(2.については理屈が難しいのでとりあえず1.だけの理解で十分です)。
1.認知症などで判断能力がなくなった場合に備える。
2.財産権を物権(法律で規定されたもの)から債権(契約で定められるもの)に変化させ柔軟なスキームに変えること。です。
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1.認知症などで判断能力がなくなった場合に備える。
認知症など判断能力がなくなると一切の取引(契約行為)ができないことになります。
「判断能力がなくなる≒幼児と同じ状態」となるためです。幼児が取引ができないのと同じようになるのです。そのため次のようなことができなくなります。
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①将来自宅を売ってその売却代金を施設に入る費用に充てたい。
②相続対策で収益アパートやマンションを建てたい。
③今の収益アパート・マンションの管理などが面倒で息子に全部まかせたい。
④銀行との交渉を息子にまかせたい。
⑤自宅やマンション・アパートの修繕(大規模修繕含む)をする予定だ。
⑥新たな借入や収益物件を買うことを予定している。
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などが一切できなくなるということです。
これは今後その人の人生で大きな不都合が生まれます。また、その一家の資産承継に大いにかかわりをもちます。
よく家族信託のお話をすると「もっと前に聞いていればよかった」「もうおやじは寝たきりだけどどうしたらいいだろう」などの話が返ってきます。そうなる前に「この家族信託」を理解していただき必要な方にはぜひ活用していただければと思います。次回以降は「託す理由1.」の具体例、さらに「家族信託」をより発展させる「託す理由2.」についてお話を進めます。
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