老人ホームへ入居していた親に相続が発生し、空き家となっていた実家を相続することはよくあるケースです。
この様な場合に、相続税の申告においてポイントとなってくるのが「小規模宅地等の特例」の適用ができるのか否か、また空き家を売却した場合に所得税の申告においてポイントとなってくるのが「3,000万円の特別控除」です。
<小規模宅地等の特例>
居住用の宅地に係る小規模宅地等の特例とは、相続の開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の要件を満たすものについては、課税価格に算入すべき価額の計算上、330㎡まで80%を減額することができるという特例です。
この特例の適用要件には、取得者要件があり、①配偶者、②同居親族、③家なき子のいずれかに該当する必要があります。
今回のケースでは、相続開始時の実家が空き家であり、①配偶者と②同居親族はいませんので、③家なき子に該当するか否かで当該特例の適用ができるかどうかの判断をすることになります。
この③家なき子とは、次の全てを満たしている人をいいます。
・相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと
・その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
・被相続人に①配偶者と②同居親族がいないこと
以上のことから、相続により実家を取得する相続人が持家を持っていない様な場合には、当該特例の適用できる可能性があります。
<空き家を譲渡した場合の譲渡所得に係る3,000万円特別控除>
また、平成28年度の税制改正において、一人暮らしの親が亡くなり空き家となった実家について、その実家を取得した相続人が相続後に実家を売却する場合における税制優遇として、「空き家を譲渡した場合の譲渡所得に係る3,000万円特別控除」が創設されました。
その内容は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人が居住の用に供していた家屋(その土地を含む)を、その実家を取得した相続人が譲渡した場合には、その譲渡益から3,000万円を控除することができるというものです。
例えば、相続により4千万円の土地を取得した場合において、5,000万円で売却できたときは、1,000万円の譲渡益が出ますが、3,000万円までの控除によって所得が出ないこととなります。
(売却対価)5,000万円 - (取得費)4,000万円 -(特別控除)1,000万円 = 0円
ただし、当該特例の適用要件の中に、「相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと」という要件があります。今回のケースでは、老人ホームへ入居し、実家が空き家となったいて、相続の開始の直前において親が居住していた家屋には該当しないことから、当該特例の適用はできないこととなります。
なお、いずれの特例もその他の適用要件が煩雑に設けられてありますので、検討の際には税理士などの専門家に相談してみてください。