■岩手県の空き家問題

あの大きな災害から、6年が経過しました。もう6年、まだ6年。とらえ方は人それぞれですが、被災地には今なお大きな爪痕が残っています。特に津波の被害が大きかった地区では、住人が戻らず、空き家となって家も多く点在します。

災害による住宅被害

 東日本大震災で、最も被害の大きかった岩手・宮城、福島の三県では、津波により、12万戸もの住宅が被害を受けたそうです。そのうち岩手県内では約2万6千戸が、津波などによって倒壊しました。また、倒壊は逃れたものの、深刻な被害を受けた家や、津波による恐怖により他都市へ転居した人も多く、被災地には空き家となった家が多く残されています。

賃貸住宅の減少と、将来的な空き家

 岩手県全域を見ると、空き家は若干減少の傾向にあります。しかし、復興住宅が増加すると、賃貸用の住宅に居住している被災者が転居するため、空き家が増加することが予想されています。また、その賃貸住宅に関しても、他県では増加傾向にあるのに対し、被災三県では減少傾向にあります。空き家率は下がるものの、住宅総数も減少することとなり、結果として人口減少にもつながり、さらに空き家が増える可能性が発生します。

■岩手県の空き家対策

震災後、岩手県では空き家を活用する動きも増えています。県内で行われている、対策をご紹介します。

仮設住宅としての貸与

 震災後、岩手県では復興に向けて、仮設住宅を建設していきました。その一部として、NPO団体が主体となり、被災地や周辺の都市内にある空き家を公共が借り上げ、仮設住宅の代替として貸与する取り組みが行われました。

 仮設住宅建築管理費用の一部を賃料として充てることにより、通常の仮設住宅建設よりも安価で済ませることができます。オーナーによっては、無償貸与を承諾してくれる人も多くいたようです。改修が必要な場合も、補助や震災特例によって国庫が全額負担してくれる上、税金も免除となるため、オーナーにとってもメリットのある制度となっています。

 

空き家バンクやまちづくりに活用

空き家バンクとは、空き家を売却・賃貸したい所有者の物件を、自治体を通じて全国に情報発信し、移住や定住したい人を募る制度です。空き家問題が深刻な地域や、過疎化が進む地域で積極的に採用していて、岩手県内では盛岡市、花巻市、一関市、奥州市が導入しています。特に導入時期が早かった奥州市では、平成28年度の時点で、売却55件、賃貸57件と、大きな結果が出ています。

また、県内に紫波町では、空き家や空き店舗などを有効活用する「リノベーションまちづくり」という活動を始めています。これは江戸時代にあった、地主に代わって家屋を管理したり、店子の世話や相談を行っていた「家守」という制度を現代版にアレンジしたもので、空き家の入居者募集や、建物のリノベーション計画などを家主に代わって行い、空き家を大いに活用しようとしています。

震災による空き家は減少傾向にあるものの、まだまだ増加の可能性がある岩手県。空き家を個人の問題と考えず、官民が連携して取り組むことが大切です。

 
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