不動産は本人の意思がなければ、売却も名義変更もできません。住宅を持つ両親が、認知症手前になってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか。

 

親が認知症手前になったら

団塊の世代がそろそろ70代を迎える頃になりました。持家が多い世代ですが、受け継ぐ前にその親たちが認知症になり、大変な手続きが必要なケースも増えています。認知症手前で、何かできることはあるのでしょうか。

 

判断力があるうちに行うこと

今後、その物件をどうしたいのか、そして両親がどう暮らしていきたいのかを、まずは両親と遺産相続対象の家族全員で話し合いましょう。認知症が進行したら施設に入るのか、家族のだれかが同居をするのか。その場合、施設代金や今後の生活費の支払いに、不動産を売ってお金を用立てることもあります。また、同居してくれる家族に、名義変更を行うこともできます。親世代の意思をしっかりと確認し、家族全員が納得できる解決方法を迅速に行いましょう。

 

保佐人・補助人をつけることもできる

認知症と判断された人に変わって、不動産に関する手続きを行える成年後見人(後述)は、実際に両親が認知症と診断された場合のみに任命することができます。その一歩手前ということですから、この場合は、本人以外は名義の変更などの不動産手続きを行うことができません。そういった場合、家庭裁判所に申請をして認められれば、保佐人として手伝いをすることができます。こちらも前記同様、家族でよく相談をすることが大切です。

 

■成年後見制度を利用しよう

認知症になる前にできることはわかったけれど、実際に認知症であることが発覚した後に不動産の売買や名義変更がしたい場合。そんな時は、成年後見制度を利用しましよう。

 

成年後見制度とは

 言葉だけは大分認知されてきましたが、そもそも成年後見制度とは、どんな制度なのでしょうか。

成年後見人とは、認知症などで重要な法律行為ができない人に変わって、代理で財産の管理や手続きを行う人のこと。家庭裁判所で認められて任命されれば、上記の通り財産の管理や手続を行う他、本人が結んだ契約を破棄したりすることもできます。最近では、認知症の老人をねらって、土地や財産をだまし取る契約を結ばされる事件もありますが、後見人はそんな契約も取り消すことができるのです。

 

後見人は、被後見人のために

成年後見制度を利用すると、子ども世代が自由に不動産売買を行い、両親の財産を使ってしまうということも危惧されます。そうならないように、後見人が行う不動産取引は、裁判所の許可が必要です。そして、被後見人本人以外の利益にならない取引は、裁判所で認められません。

せっかく親世代が建てた家。本人たちの意思に沿えるよう、日ごろからコミュニケーションをとっておくことが大切です。

 
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