こんにちは。弁護士の大西敦です。
最近、マンションの一室を貸している方から、住居目的で賃貸借契約を締結しているが、そのマンションがマッサージ店として使用されているようだ、住居以外の目的で使用するのであれば出て行ってもらいたいとの相談を受けました。
賃貸借契約においては、その使用目的が定められるのが一般的はないかと思います。例えば、「住居」、「店舗」といったものがあります。
契約に定めた使用目的に違反した場合、例えば、住居目的で賃貸借契約を締結しているにもかかわらず、店舗として使用されているような場合に、出て行ってもらえるか、当該賃貸借契約を解除できるのかが問題となります。
賃貸借契約のような継続的契約においては、当事者間の信頼関係が破壊されて初めて契約解除が認められるとされています。この考え方を「信頼関係破壊の法理」といいます。
これは解除を制限する考え方で、例えば、用法違反があること、賃料を1か月分滞納することは賃貸借契約に違反することになるわけですが、このことから、直ちに契約解除が認められるわけではないということになります。
用法遵守義務違反を理由とする解除を認めた裁判例としては、以下のようなものがあります。
・麻雀店として使用する目的で賃借した店舗で、ゲームセンターの営業を行ったもの(東京地裁昭和60年1月30日)
・じゅうたんの販売・選択のために賃借した貸室を暴力団事務所として使用したもの(東京高裁昭和60年3月28日判決)
一方、解除を認めなかった裁判例としては、以下のものがあります。
・活版印刷の工場に使っていた建物を、写真印刷のための作業所に変更したもの(平成3年12月19日)
この他によく問題となるのは、ペット飼育を理由とする契約解除ですが、ペット飼育を理由とする契約解除は幅広く認められているのではないかと思います。解除を認めた裁判例は比較的多数存在します(東京地裁昭和58年1月28日判決、東京地裁昭和62年3月2日判決、東京地裁平成7年7月12日判決)。
ペットを理由とする解除が認められやすいのは、ペット飼育の場合は、騒音や悪臭が生じやすいこと、建物そのものを損傷する可能性が高いことにあると思います。
上記のマッサージ店として使用している場合については、その営業時間帯、マッサージの内容(例えば、オイルを使用するのであれば、建物が傷むことがあると考えられますが、指圧のみといった場合には、建物そのものに対する影響はあまりないと考えられます。)、マンションにおける住宅や店舗の割合、同一マンションの居住者に対する影響といった問題が判断要素になるのではないかと思います。