こんにちは。弁護士の大西敦です。
前回のコラムでは、区分所有法57条に基づく請求をご紹介いたしました。
区分所有法57条は、「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」に対して、その行為の停止、結果の除去、予防するため必要な措置を執ることを請求することができます。
しかしながら、57条の請求が認められたとしても、それだけでは区分所有者の共同の利益が図れない場合が考えられます。
よく挙げられるのは、マンションの専有部分が暴力団事務所に使われているような場合です。
このような場合に、区分所有法58条は、当該区分所有者の使用自体を禁止する請求を認めています。
58条に基づく請求が認められるための要件は、以下のとおりです。
1 「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」がなされていること
2 その行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
3 57条請求によっては、その障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること(3につい
ては、あらかじめ57条に基づく請求をしなければならないというわけではありません)
4 集会決議(区分所有者及び議決権の4分の3以上)
5 集会決議前の弁明の機会の付与
使用禁止請求は、「相当の期間」の使用禁止を認めています。無期限の使用禁止までは認められません。
この「相当の期間」というのは、あまり長期ではなく、例えば、東京地裁平成23年1月25日判決は、3か月の使用禁止を認めています。これは専有部分にゴミが大量の放置された事例です。
無期限の使用禁止を実現したいということであれば、区分所有法59条に基づく競売請求になると思います。
次に、請求の相手方ですが、これは当該区分所有者になります(家族等も含まれます。)。単なる占有者に対する請求までは認められません。
使用禁止となるのは、専有部分です。
これは裁判所の判決によって効力を生じることになります。
当該区分所有者が判決に従わない場合には、間接強制の方法を取ることができます。間接強制というのは、債務を履行しない義務者に対し,一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金で義務者に心理的圧迫を加え,自発的な履行を促すものです。
これまでは別々に区分所有法に基づく措置を紹介しましたが、次回のコラムでは整理して、まとめてご説明したいと思います。
【区分所有法】
(区分所有者の権利義務等)
第6条
1 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条
1 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前3項の規定は、占有者が第6条第3項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
(使用禁止の請求)
第58条 前条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第1項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でする。
3 第1項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4 前条第3項の規定は、第1項の訴えの提起に準用する。