こんにちは。弁護士の大西敦です。
タイトルが長くなってしまいましたが、マンションにおいて、その共用部分を区分所有者が排他的に使用していることがあります。
例えば、駐車場では敷地に車を停めていたり、屋根や壁に広告看板を設置しているような場合です。
マンションの共用部分は、区分所有者全員の共有となります。区分所有者は、その用法に従って使用することができます。
仮に、特定の区分所有者が共用部分を排他的に使用しているような場合、他の区分所有者の使用を妨げているような場合には、排他的に利用している者に対して、妨害排除請求、妨害予防請求訴訟を提起することが考えられます。妨害排除請求権というのは、物権を有する者が、その物の支配を部分的に侵害されている場合に、侵害の除去を侵害者に対して請求する権利のことを言います。
ここで問題になるのは、その請求権者、原告ですが、各区分所有者、管理組合、管理組合法人、管理者です。
各区分所有者は、共有持分権に基づき、単独で訴えを提起することができます。この訴えは保存行為に該当するからです(区分所有法18条1項但書)。
次に考えられるのは、区分所有法57条に基づく差し止めを行うことができます。
区分所有法57条は、区分所有者が、「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」をした場合に、その行為の停止、その行為の結果を除去、その行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができます。
区分所有法57条に基づく請求を行うことができるのは、他の区分所有者の全員(違反者を除いた全員ということです。)、または、管理組合法人になります。
各区分所有者が単独で行うことはできません。
また、管理組合(法人ではない場合)は、集会の決議を経て、管理者または集会で指定された区分所有者が原告となって、区分所有者全員のために訴訟提起することになります。
【区分所有法】
(区分所有者の権利義務等)
第6条
1 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。
(共用部分の管理)
第18条
1 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第2項の規定は、第1項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条
1 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前3項の規定は、占有者が第6条第3項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。