こんにちは。弁護士の大西敦です。
先月公開したコラムでは、購入したマンションに未払管理費がある場合についてお話しました(/column/onishiatsushi/19101/)。
マンションの管理費を滞納した場合、そして、滞納が続いた場合、未払管理費が積み重なっていくことは言うまでもありません。
任意の支払いを行わない場合、管理組合は、管理費滞納者を被告として訴訟提起をすることが考えられます(もちろん、法的手続を取らない管理組合もありますし、支払督促や調停といった手段も考えられます。)。
判決になっても滞納者が支払いに応じない場合、管理組合としては強制執行を行うことになるわけですが、預貯金通帳がわからない、滞納者が自営業、無職といった事情で給与差し押さえもできないといったことがあり得ます。
このような場合に、区分所有法59条1項は強制競売について定めています。
区分所有法59条1項は、①区分所有者の共同生活上の障害が著しく、②他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合に強制競売を請求することができる旨定めています。
従いまして、単に、管理費を滞納しているだけでは強制競売は認められません。
まず、①については、通常、管理費滞納の期間、滞納額が考慮されます。滞納額が大きくなればなるほど、マンションの通常得られるべき管理費に占める滞納額が大きくなりますので、共同生活上の障害が著しいとされることが多いと言えます。
次に、②については、管理組合と滞納者との交渉過程、訴訟等の手段を講じてきたかどうかといったことが考慮されます、
区分所有法に基づく競売は、管理費滞納者が当該マンション購入にあたり住宅ローンを利用し、抵当権が設定されている場合にも行うことができるというメリットがあります。
通常の競売は、マンションに抵当権が設定され、その債務がマンション時価額を超えるような場合には認められませんが、区分所有法に基づく競売は、そのような場合でも認められます。
このような場合、管理組合としては、当該マンションを落札した新所有者に対して、滞納管理費を請求していくことになります。マンションを購入した者は、区分所有法8条の「特定承継人」に該当し、管理費の支払義務を負うことは、上記のコラムでご説明したとおりですが、競売で所有権を取得した者も「特定承継人」に該当するため、管理費の支払義務を負うということになります。
管理組合としては、一定の滞納額がなければ強制競売を求めることはできませんが、一方で、余りに滞納管理費が大きい場合には、落札者が現れないということになりますので、その前提となる法的手続も含めて早めに準備した方がいいように思います。
【建物の区分所有等に関する法律】
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条
1 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前3項の規定は、占有者が第6条第3項において準用する同条第1項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
(区分所有権の競売の請求)
第59条 第57条第1項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、前条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。
3 第1項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。