今年の不動産業界はマイナス金利の影響を受けました。少し振り返ってみようと思います。

①マイナス金利とは
今年の1月下旬、マイナス金利の報道が日本を駆け巡りました。それから10カ月程が経ち、「住宅ローンの金利安いなあ」とか
「普通預金の利息が0.001%って何」という会話を良く聞くようになりました。
マイナス金利とは、金融機関が日本銀行に預ける金利の話になります。どういう事かといいますと、各金融機関が日本銀行に預けると、
新しく預ける分から-0.1%の金利がかかる。つまり金利を各金融機関が日本銀行に払うという事になります。それならば日銀にお金を預
けておくよりも、企業や住宅ローンにお金を貸そうという動きになり、市場にお金がたくさん出回ります。これがマイナス金利なのです。
上記の会話が聞かれるのもその影響になります。

②マイナス金利の必要性
 日銀は市場にお金を出回らせて、企業の設備投資と賃上げを後押しし、景気を刺激して、目標である物価上昇率を2%に近づけたいという
意向があります。アベノミクスの3本の矢の1本ですね。
 日本の金融政策は2008年のリーマンショックからゼロ金利政策を導入しており、金利はこれ以上下げられない状態でした。そこでとられ
た政策が量的緩和と質的緩和でした。
 量的緩和とは、日銀が金融機関から国債を買い取って、金融機関が自由に使えるお金を増やして市場に出回らせる政策です。
 質的緩和とは、日銀が金融機関から買い取る資産の対象を広げて、超長期国債やETF(証券取引所で取引される投資信託)などの金融
商品も買い入れようとする動きのことです。
 つまり、市場にお金を出回らせるのが目的で行われた政策です。マイナス金利は物価上昇率2%を達成するための更なる緩和として日銀が
とった政策になります。

③資産運用への影響
 マイナス金利の影響は様々なところで出ています。
銀行の普通預金の利息が0.001%に引き下げられましたし、通常10万円以上預けた場合に、0.025%の金利がつく通常貯蓄貯金も0.001%に

引き下げられました。
 生命保険大手の日本生命も、4月以降、新たに契約する一時払い終身保険について、契約者に約束する予定利率を年0.75%から0.5%に引

き下げました。これはどういうことかといいますと、マイナス金利の影響で、資産の運用先である国債の利回りが大きく低下し、契約者に約
束している利回りを確保するのが難しくなったためです。
 国債の利回りの低下は、企業の退職金や年金の運営にも影響はでています。大手企業では、退職給付債務の上乗せが相次いでいます。

④不動産投資におけるマイナス金利の影響
 マイナス金利は銀行には厳しい状況ですが、逆に不動産業界には良い影響を受けています。最近物件の利回りが下がり、高くなったなあと
思われる方も多いとおもいます。
 これは、マイナス金利の影響で、不動産投資をする時のローンの金利が下がり、非常に多くの人が借りやすくなったためです。
 首都圏を中心に利回り5%前後で物件が売れたりします。今まで物件を所有していた人にとっては、今年は売り時の年であるといえます。
つまり、不動産業界に多額のお金が入ってきているということです。その背景にはREITなども見え隠れしています。

 ※参考 経済学者が3分で分かる日銀のマイナス金利とその影響について
     NHK NEWS WEB

不動産投資専門 叶税理士法人

税理士 小田和典


 
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