債務者は理解しておきたい「期限の利益」という用語
私達はなぜ、多額の住宅ローンという融資をすぐに返済せず、金融機関などから
35年間という長期に渡って返済することが出来るのでしょうか。
普通にお金を借りた場合、たいていは次回に全額返済するものです。
この長期に渡って返済することが認められているのは、金融機関と債務者の間で
交わされる金銭消費貸借抵当権設定証書(金消)の中で、債務者に期限の利益が
認められているからです。
つまり金融機関としては一括して融資しますが、返済は長期に渡る分割でいいですよと
金融機関が認めているから可能なのです。
逆に言えば、債務者が期限の利益を失うと、金融機関は一括して返済を求める
ことが出来ます。
そして、その期限の利益喪失事由は金銭消費貸借抵当権設定証書に定められており、
債務者の長期延滞や自己破産などが該当します。
金融機関からの最後通牒には「あなたは期限の利益を喪失したので一括弁済を求めます」
と必ず書いてあります。
こうなると、債務者としては残債を一括弁済しなければならず、事態は非常に厳しくなります。
「期限の利益」と関連して覚えておきたい「遅延損害金」
そして期限の利益と密接に関連するのが、遅延損害金です。
住宅ローンでは年率14.6%と定められていることが多いと思いますが、この遅延損害金の金額は
期限の利益を喪失しているかどうかで、大きく異なってくるのです。
例えば100万円延滞していた場合、期限の利益を喪失していなければ遅延損害金は
100万円だけにかかりますので146,000円となります。
しかし、3,000万円の融資を受け残債が2,000万円ある中で、期限の利益を喪失していた場合、
残債2,000万円分と延滞100万円分に遅延損害金がかかりますので、合計2,100万円の14.6%で
3,066,000円となります。
上記の146,000円であれば何とかなるかもしれませんが、残債2,000万円と遅延損害金300万円の
合計2300万円の一括弁済はほぼ不可能でしょう。
このように期限の利益を喪失すると、事態は悪い方悪い方に向かい正常復帰が困難になります。
期限の利益を喪失しないことが何より重要です。