生命保険会社はなぜMBSを購入するのか
住宅ローンの証券化についての後編です。
前半までの解説で、A銀行と住宅金融支援機構は資金を回収することが出来て、
機関投資家も国債よりも利回りが高い、MBS(住宅ローン担保証券)を取得する
流れはおわかり頂けたと思います。
ではまず、なぜ国債よりも利回りが高いのでしょうか。
利回りは信用力の高さに反比例します。つまり、信用力が高ければ高いほど、
利回りは低くなるのです。
日本国債は政府債務が多いものの、利払いの正確性から人気が高く、
利回りは低いです。
一方のMBSは、住宅ローン債権が担保になっている点がポイントでしょう。
住宅ローンも一定割合で必ず延滞は発生しますが、企業向けローンと比べると
その割合は低く、また政府系の住宅金融支援機構が発行するという点で、
信用力は国債に次いで高いです。
従って、利回りは国債よりも高くなります。
生命保険会社のような機関投資家は、安全運用が最優先なので、
国債よりも多少利回りが高いMBSは最適な商品なのです。
MBSのリスク管理はどうなっているのか
ただし上記でも触れたように、住宅ローンに延滞が発生した場合、
その責任の所在はどうなるのでしょうか。
住宅ローンには4つのリスクがあると言われています。
①信用リスク
②流動性リスク
③金利リスク
④期限前償還リスク
①の信用リスクは、先に説明した延滞などのデフォルトリスクです。
②の流動性リスクは、機関投資家へ期日通りに元利金を支払えるか
というリスクです。
③の金利リスクは、長期固定金利でMBSが発行される関係上、
これよりも高い金利でMBSが発行されるリスクです。
④の期限前償還リスクは、顧客が繰上返済をしてしまい、機関投資家が
約束通りの元利金を受け取れないリスクです。
このうち、①信用リスクと②流動性リスクは住宅金融支援機構が負担し、
③金利リスクと④期限前償還リスクは機関投資家が負担する決まりです。
従って、延滞などのリスクは住宅金融支援機構が負い、繰上返済で元利金が
早期に償還されるリスクは機関投資家が負うことになります。
住宅金融支援機構にならい、最近はメガバンクなどでも住宅ローンを
証券化する所が出てきています。
アメリカでは何でもかんでも証券化したため悲劇を招きましたが、
きちんと証券化すれば証券化は有効な手法です。
今後も証券化の流れは加速していきそうです。