住宅で譲渡損失が出るのは、ある意味当然
住宅を取得し売却した場合、その損益は譲渡所得として認識されます。
そして、住宅においてはバブル期を除いて、譲渡損失になるのが普通です。
人が住んでいる住宅においては土地は減価しませんが、建物は減価します。
また、購入した分固定資産税などはかかりますが、家賃などはかかりません。
従って、保有年数が長いほど、譲渡損失が発生するのはある意味仕方のない
ことと言えます。
しかし、不動産市況が冷え込みすぎると、譲渡損失が1,000万円で済んだところが
2,000万円と大きくなり、住宅の売却価格を住宅ローン残高が上回る、などの弊害も
目立つようになりました。
上記の場合、自宅が無くなっても住宅ローンは完済まで返済義務が残ります。
このような弊害により個人の消費マインドが落ち込み、景気の足を引っ張らないために、
損失を翌年以後3年間繰越できる制度が制定されました。
売却だけで損失を合計4年間控除できる特例
(措法41条の5の2)
従来から、このような住宅資金関係の特例は制定されていましたが、
対象者が住宅を買い換える人に限定されていました。
これは、住宅の買い換えによって生じる経済効果と相殺することで、
特例の使用を認めるという趣旨があったからです。
しかし、住宅の買い換えにこだわりすぎると弊害の方が大きくなることから、
この特例は買い換えを条件にしていない所に特長があります。
詳細を解説すると長くなり過ぎますので、要点だけ説明しますと、
まず譲渡する年の1月1日現在で所有期間が5年超なければなりません。
これは、住宅の転売者は対象にしないということで、当然の規定と言えるでしょう。
そして、損失を翌年以後3年間繰越できる条件として、
①譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額
②譲渡資産にかかる一定の住宅ローンの金額から譲渡資産の譲渡対価の額を控除した残額
上記の内のいずれか少ない方の金額となります。
上記の文章だけではわからないと思いますので、具体例で説明します。
マイホームを以下の金額で購入し、住宅ローンを組んだとします。
③購入代金 6,000万円
④住宅ローン 5,000万円
上記を10年後に売却
⑤売却代金 3,000万円
⑥住宅ローン 4,000万円
この場合、①により、譲渡損失は⑤-③で3,000万円となります。
また住宅ローンに関しては、②により、⑥-⑤により1,000万円となります。
上記の内、少ない方の金額ですから、1,000万円が翌年以後3年間繰り越しできる
金額となるわけです。
確定申告する年と合わせると、合計4年間は1,000万円までの所得はなかったことになり、
支払った税金は還付されます。
賃貸住宅などに転居して、非課税の分を全て貯蓄すれば、住宅ローンも完済できそうです。
毎年の確定申告が面倒かも知れませんが、絶対にお得な制度ですので、
該当する方は是非利用して下さい。